「どっち?」
「っ、……うぁああ、さ、さわんなっ!」
 ぐりぐり、と人差し指で押さえつけられれば、自分でもじわじわとパンツが濡れた事が分かった。
「っ、む、り、むりっ、」
 それでも、絶対に屈したくはないと首を振り続ける。微弱な刺激が続くばかりで、鳥肌が止まらないんだ。
 すると。
「……言わないならやーめた」
「でぇっ! 、ッ、……んっ、」
 ぐぐ、っとちんこを握られて、痛くて痛くて萎えそうだった。ぱっと離れた刺激に安心して、この悪夢が終わるのかと思った。帰ってくれるのかと思った。
「だってひーくん、なんも言わないんだもん。こんなに勃ってんのにさぁーあ?」
「うあっ、」
 もちろん、そんな考えは楽しそうな笑みを浮かべる高梨を見て一瞬にして消えてしまったわけだけれど。
 やめるって言ったくせにまた触ってんじゃねぇよ!
「ねぇ、気持ち良い?」
「良い、わ、け……ない、だろ……っ!」
「ふーん、強情。意外と頑固なんだね」
 ぺろっと舌なめずりする高梨が視界に入ってきて、もうやめてくれと首を横に振り続ける。もういいだろ、もうみっともねぇ姿なんて見ただろ、はやく止めろよ、どけよ、触んじゃねぇ。
 言いたいのに口を開けば絶対に言えないと分かっていて、唇を噛み締める。すると高梨の手がパンツから離れ、去った刺激に漸く少しの安心を取り戻した、その瞬間。
「じゃあいいや、ごかーいちょーう」
「!!!」
 ぱかっと脚を開かれて、その間に高梨がするりと入ってきた。
「ばっ、おまえ出てけ! さ、わんなっ!」
 俺の脚は高梨の太腿の上に乗っていて、尻が若干ベッドから浮いてしまっている。
 全く同じ体位を元カノと経験済みなだけに、なまじ生々しくあの時の彼女の気持ちがようやくわかった。いやわかんねぇよ、あれは合意でこれは強姦だっつーの!
 高梨から逃れようと脚を動かし蹴りつけるも、勿論脚は空中をばたつくだけで高梨になんて一発も当たらない。
 そうこうしているうちに、高梨の手がスウェットとボクパンを一気に引っ張ってきて、だんだんと位置を下ろして行く。手を伸ばしてそれを食い止めようとしたが、勿論忌々しいネクタイのせいでそれはかなわず。散々玩具の様にいじられた性器がぴょんっと出てくるものだから、いっそこのまま気絶してしまいたかった。ああもう気絶したらやめてくれんのかな、出てってくれんのかな、気絶ってどうすりゃいーの、あーーーー。
「ぱちぱちぱちー。やーっとあえたねー、ひーくんじゅにあー。んーちゅっ」
「ぅあっ!」
「あ、喘いだー」
「……!」
 でかい体躯を折り曲げて、高梨が俺のちんこにキスなんてするもんだから、驚いて声をあげてしまうのは当然のことだった。
 変な声が出た事を突っ込まれて、二度と出してやるものかと唇をぎゅーーーっと噛み締める。するとその瞬間にも高梨は一旦折り曲げた俺の脚からスウェットとパンツを引き抜いて、自分の指につけていた指輪を外すものだから、どうやらガチでやる気が見えてきて更に恐怖に顔が強張ってしまった。震え上がりながら唇を噛み締めると、何も履いていない四肢を撫でられ、余計に変な声が出そうになる。 
「いいじゃんもう、そうやって唇噛んでるくらいなら喉の奥まで指突っ込んじゃうぞっ」
「っ……!」
 手を伸ばした高梨に固く閉じた唇周辺を指で撫でられる。このまま口を開いた瞬間に本当に喉元まで指が突っ込んできそうで、恐怖で口を開くことなんて出来そうに無かった。
「えづいても喘ぐひーくん……そうだなぁ、うん、それも楽しそうかもねぇ。苦しそうになりながら涎垂らして、涙もいっぱい流してくれるんだよね? そうだ、昨日お酒いっぱい飲んでたみたいだしそのまま勢いでゲーしちゃうかもね。まぁそんなことくらいじゃ俺は止めないけど。いいよひーくん、その可愛い唇、俺に無理矢理開けて欲しいんでしょう?」
「やあああっ、やだ、いやだっ!! キモイおまえマジで!!」
 ぶんぶんと首を振って否定すると、高梨はにっこりと笑う。こいつおかしい、きもい、イケメンなのに思考回路狂っちゃってる、栄養全部顔に集まっちゃってる!!!
「喋れんじゃん〜。じゃあちゃんと楽しもうね、一緒に!」
「ばっか、そんなのムッ……うああぁっ」
 否定しようとした途端に再び高梨が俺の上唇と唇で挟んできた。ふにゅっとした感覚が男からしたということが気持ち悪くて、離れろと喚くと、そこからべろんと唇を舐められ、ついでにといったように前歯もべろりと舐め取られた。せめてもの抵抗で奥に逃げていた舌を持って行かれ、ざらりとした感触が口の中で暴れ始めた。
「いい感じいい感じ、あ、ほらもう、噛まないの〜」
「え、ちょ、来んなっ……おまっ……んんっ」
「ん、……オイシイ、ひーくん」
「だ、からっ、やめっ、んんーっ」
 絡められた舌を利用して、べーっと前に突き出しながら一気に高梨の舌を口内から追い出す。
「もうー。こらぁ、口閉じないーあーけーてー」
「んーん、んーーー!」
 頑なに唇を閉じ首を振る。絶対に進入させるもんか、開けなかったらこいつだって喉まで指なんて入れらんねぇだろが!、
「もー、しょーがないなぁー」
「んんん!!」
 そんな考えが甘かったと実感するのはたった一秒後。
 高梨の右手は俺の下にあって、勃ちあがったままだったそれの根元をぎゅ、ぎゅ、と横に擦り始めた。擦れる感触に喉から声を漏らすと、左手で俺の鼻を抓んで、ずっと唇の周辺をべろべろと舐めてくる。
 ちょ、ちょっと、ま、待って、んなこと、され、たら、いっ、息、息が……!
「んっ、んーっ、んんんんーーー」
「あははっ、いいよぉー、抵抗するひーくんも可愛いし。どんどんやってぇー」
 興奮したように更に右手を動かされれば、こっちだって身体から沸き上がる声を押さえられない。それなのに、口も鼻も押さえられているから声にすらならなくて、うっぷと顔の奥で閉じ込められた音がする。
 勿論そんなものが、長い時間も保てる筈も無くて。
「……っ、ぶっはぁあっ!! 、はぁ、はぁっ」
 弾けるように空気を貪るけれど、浅い呼吸をできたのはたったの2秒ほどで、そんなことは許さないとばかりに再び高梨の舌が口内の壁を舐め出した。
「んぁっ、ふ、うあっ、…んんんっっ……!」
 む、むり、死ぬ、死ぬ、俺殺される、やだやだ、男とちゅーしながらなんて死にたくないっ!
 べろべろと好き勝手に口腔を蹂躪されて、苦しくて生理的な涙が溢れる。うっすらと目を開ければ、高梨がずっとこっちを見て笑っていたことを漸く知って、本当に逃げたくなった。
 高梨の右手は完全に勃っているそれを扱き上げていて、先端から絶えず出てくる液のせいでいやに卑猥な音がする。もういやだ、いやだやだやだ、いやなのにきもちいいとうっすら思ってしまっている自分がいちばんいやだ!
「ほ…はへほっ、ふぁ!」
「はーい。ひーくん何言ってるかわかりませぇーん」
「っ、うぁ、や、やめろっつってうんんっ!」
 高梨が唇を離し話し出す瞬間に便乗して話すけれど、すぐにまた唇が降って来る。
「いやでーす」
「こんのっ……んぁあ!」
 余裕ぶった笑みに怒りを顕にすればまた、右手で先端をぐりぐりさせながら唇を押し付けられた。
 唾液交換みたいにぐちゃぐちゃと唇の端から垂れてくる。それすらも愛しそうにべろりと舐め取られる瞬間だけ、漸く息をすることができた。
「はぁ、っ、んぅあ、ん、んんっ」
 しかし、変わらない下への刺激にそろそろ限界を感じていて、出口が見え始めてしまった。こんなやつにイかされるなんて絶対に嫌だって思うのに、つくづく男の下半身は独立して生きていると思う。
 体中に電気が流れるようにびりびりと走ってきて無我夢中になれば、だんだんと声も大きくなってしまう。



9/12ページ

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!