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終業後、疲れた身体に鞭打ってビリビリに破かれた情報誌を本屋まで再び貰いに行った理由は、情報を得るためというよりも最早ハルトへの意地と怒りのほうが強くなってしまっていた。
引越情報誌を貰ったついでにと入った店内は、職業柄、ハルトがポスターカレンダーになっていたり、雑誌の表紙を飾っていたり、果ては五冊買ったらハルトのしおりが貰えるキャンペーンまでやっていて、怒りの矛先をあえて避けながら歩いていると、ふと、今の自分にはとても惹かれる一冊の本と出会ってしまった。
「彼氏と上手に別れる方法……?」
普段ならば手に取るはずもないタイトルに興味を惹かれ、眉間に皺を寄せながら一番上の本を手にとる。
「彼氏なわけねえけど、心境的にはまったく一緒だな」
思い出すのは、朝喧嘩別れをした幼なじみただ一人。
冷めちゃった彼と別れる方法、なるべく傷つけずに別れる方法、大好きな彼と別れる方法……様々なケースに対応するべく書かれたその本は対策と具体例が示されていて、思わず、立ち読みということも忘れて導入部分を細かく読み進めてしまった。
境遇と心境が非常にマッチしている今、ピンク色の表紙という概念を捨てて勢いで買ってしまおうか、と顔をあげると、なぜか、右から左からチラチラと視線を感じた。
「……ん?」
ただ本を読んでいるだけなのに、異常に見られている気がする。
またハルト関連か? と気まずさから下を向いたところで、ようやく、本のタイトルと自分の顔を見比べられていることに気が付いた。
「―――!」
(ちっげー! ハルトじゃねー!! ゲイに見られてるだけかよちくしょう! 学校近いんだぞふざけんな!)
今にも携帯でカメラを向けられそうになっている状況に、現代社会怖いとすぐさま立ち去り、買う予定もないビジネス書のラックまで急いで移動する。
折角買おうと思ったのに逃げてしまった、と、一瞬気落ちしていたが、ふと違和感を覚えて手元を見ると、逃げる拍子に置いてくるのを忘れたらしいピンク色が煌々と主張を続けているのだった。
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