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100 stories
015.こぼれ落ちる/静雄



ザァァァァ…


雨が、降りしきる。
そんな風に雨が降りしきっている時。私は1人でふらりと外に出るのが常だった。

行き着くのは、人のいない所。
人のいない所で、雨が降りしきる空を見上げる。


そうして…涙を流す。


いつからそうするようになったのかはわからない。でも、雨の中で泣いていても…泣いているようには見えないから。だから、そうするようになった。そんなことだけは覚えている。



そして私は雨の降っている今日、また1人で泣く。



こんな所なら、誰にも見られない。
そう思っていたのに…




「…何してんだよ、こんな所で」





聞き覚えのある、声が聞こえてきた。
振り返ると、黒い傘とバーテン服。


「……静雄、さん…」


人に見られないように泣いていた私は唖然としてしまった。状況を説明する術なんて、私にはない。彼の名を呟いただけ。


「泣いてたのか?」



その言葉にびく、と肩が震える。図星。


「なん、で」
「さくらのことだからな。見りゃわかんだよ」


黒い傘の中に引き寄せられるように招かれて、そのまま包み込むように抱き締められる。


「服、濡れる…」
「んなの乾かしゃいいだけだろうが」
「……でも、」
「ごちゃごちゃうるせぇよ。泣きたきゃここで泣け」
「…………。」


そう言われて、完全に涙腺が決壊した。
何かが壊れたように、私は彼の胸の中で泣き続けていた…。


「泣くことは悪い事じゃねぇ。強がるなよ…」


 ♂♀


その後は、いつも以上に…妙にすっきりした気分だった。


「落ち着いたか?」
「はい。…あの、ごめんなさい」
「は?」
「色々と…。何より、服濡らしちゃったし…」
「さっきも言ったろ、乾かしゃいいだけだ。…というかさくらの方が深刻じゃねぇか、服」
「……あ、」


雨が降ったときの習慣だったから、あまり気にしてなかった。
でも…なんか、寒い。濡れてるからだけど。


「その様子じゃ傘持ってねぇだろ?送ってやるから一旦帰れ」
「…はい。ありがとうございます」
「………それとな」


先程とは違って、静雄さんはどこか口ごもりながら口を開く。


「俺の前で強がるのは…やめろ。泣きたいなら、俺の所で泣けよ」


言った台詞が恥ずかしいのか、彼は私から目を逸らしている。その頬が少し赤くなっているのがちょっとだけ嬉しかった。


そんな優しさにまた涙が一滴こぼれ落ちたけどそこに浮かんでいるのは、笑顔。


「さくらにはその方が似合ってる」


こぼれちる

最後の一滴は泣き顔と一緒に、俺が拭ってやる。




*-*-*-*-*-*-*
お題久しぶりだ…!
あ、地味にこれやめてたわけじゃないんですよ(笑)

2010.4.15
鈴野 椿姫

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