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どうしておまえはまた我のところに戻ってきた。我の元に戻ってきたところで、おまえの為になることなどないだろう。自惚れてもいいか、我の傍にいたいと思ってきてくれたと。


あのあと、結局亜細亜だから、なんだといって琉球を中国が引き取ることになった。琉球王国といっても、日本領。小さき姿だったから誰かの助けが必要だとことになっていたので、助けはいらないのではないのかという結論にも至ったのだが、琉球が、中国と居たいと望んだのだ。



「兄様、もはや小さき姿ではいられません。わたしに身を守る術を叩き込んでください」

目の前の妹の言葉に唖然とした。戦う術を、教えろと?

「何を言っているある。おまえは日本に守られているから戦う知識なんていらねーんじゃねーあるか?」
「……そう、ですね。では、今の言葉は早々にお忘れ下さい。わたしは夕飯の用意をしてきます」

中国の言葉に、少しだけ眉を寄せた琉球に、中国は違和感を覚えた。もう何年も昔に日本と一緒に見つけた琉球は、小さき頃から自分に従順だった。今だって、そうだ。そうだったのだが、眉を寄せたことが、今までにあっただろうか。あんな顔を、見たことがあっただろうか。居てもたってもいられなくなった中国は琉球を追い掛け、手を思い切り引いた。その瞬間、琉球は痛みに思い切り眉を寄せた。そして中国も気がついた、琉球が、怪我をしていると。

「…これは、なにある。」
「昨日、竹やぶで」
「ちゃんと説明するよろし、なんで体中に怪我してるある」
「それは、…言えません。」
「っ琉球!」

中国の怒声に肩をびくりと震え上げ、目からは涙が溢れた。(ああ、どうしてこの子は、)目の前で仕切にしゃくりあげる妹を中国は優しく抱き上げた。

「琉球、泣き止むある。今のは我が悪かったある」
「兄様、兄様、ごめ、ごめんなさ、い」
「わかっているあるよ、おまえが気に病むことなんてなーんもねえある」
「っ、に、さま…」

昔から、こうなのだ。琉球は中国も、そしてもう一人の兄もとても大事で、どうしようにもどちらか一方を裏切るなど出来ないのだ。

風が変わった。(明日にでも、アイツが我の元に来るだろう。)中国は琉球を抱き上げ、部屋へと足を進めた。



長年、生きていただけある。風の流れたげで誰がいつ、自分の元に訪れるのかが何となくわかるようになった。いや、今日の訪問者は長年連れ添ったからなのか、だからわかったのだろうか、どちらにせよ、その訪問者は中国にとっては今もっとも会いたくない者であった。

「お久しぶりです、中国さん。その後お変わりはないですか?」
「あいやー日本!久しぶりあるね、我は変わらねーある。おまえこそ、最近開国してどうある?」
「ええ、欧米文化についていくのはどうにも難しく…国内もその変化に対応しきれず少し荒れた状態ですね」
「…少し、あるか」

他愛のない会話が途切れた瞬間、双方の目の色が変わった。そして、その沈黙を破ったのは日本だった。その目はいつも異常に黒をましており、それでいて業火をともした様な赤色にも見えた。

「単刀直入に言います。中国さん、琉球さんがこちらにおられるでしょう。早々に還して頂きたい」

(なるほど、やはり琉球を傷つけたのは)

「なんでおまえが知っているある?」
「アメリカさんに教えていただきました。で、還して頂きたいと言ったんですが。」
「…アメリカ、あるか。まあいいある。日本、我も単刀直入に言わせてもらうあるよ。」

「我は今のおまえに琉球を還す気はこれっぽっちもねーある。大体、我は琉球を手に入れたわけじゃねーある、アイツが勝手についてきただけあるよ。だから日本、今日はもうこれで帰るよろし」
「……」

中国の返答に日本はさらに目を赤くした。いつもの冷静な深い黒の瞳は何処へ消えてしまったのか。そして、冷静に口を開いた。

「そういうわけにも、いかないのですよ。彼女は正式に、日本領となりましたから。あなたのものでないのならば、尚更。あの子が帰ってこないと私にも負担がかかるんですよ」
「…どういうことある日本」

日本は今までに聞いたことのないような中国の地を這う様な声に一瞬気圧され、飲み込まれたような感覚に陥り、冷や汗を落とす。何千年と生きているだけのことはある、と気付かれないように一つ笑みを零しもう一度中国と向き合った。

「戦によって、薩摩潘の不庸国となったのですよ、琉球王国は。」

その言葉を聞き終わるやいなや中国は日本につかみ掛かった。

「日本…本気あるか、」
「ええ、至って正気です」
「妹を、自分の妹を…!」
「…だから、なんだというのです!」
「アイツは我がアイツの体中についた傷について聞いたときもおまえがやったとは言わなかった!アメリカが連れて来て、久しぶり会ったときも日本の為に消える覚悟があると言った!おまえは、妹を、!」
「…っ!」
「答えるある日本!」
「…ぃ、…さ…」

「私の気持ちも知らないで!そのようなことをおっしゃらないで下さい!わかっています、わかっています。あの子は私とあなたで見つけた大切な妹です。私が守ってあげる、初めてになった大切な妹です。あなたに言われなくてもわかっています、だって私たち兄弟でしょう!」
「ならなんで…!なぜ琉球を傷つけたある!」
「仕方ないでしょう…!上司の命令は、絶対なのですよ。私は、私たちは国なのですから」
「それは、妹でもあるか」
「ええ」
「我、でも…あるか」
「…ええ、そうです!っ、さあ!琉球さんを還して頂けませんか、私はこれで失礼したい。」
「…それは、我が決めることじゃねーある。琉球、出てくるよろし」

「兄様、兄上、…わたし、」

「さあ、琉球こちらへいらっしゃい。私と一つになったからといってあなたはまだ消えることはありません。日本の離れ島国として、他国と貿易をしていただきます。もちろん、清ともです」
「日本…?」
「そして中国や朝鮮の難破船も、全てあなたに取り締まっていただきます。」
「兄上!わたしっ消えなくても、いいのですか!?兄上と一つになってしまえば兄上の負担も少しは減…」
「どこの世界に、どこの世界に己の為に妹に消えろという兄がいますか。」

日本の消え入りそうな声に、さっきまでの険悪な空気は消えていた。中国も少しだけばつが悪そうな顔をし、琉球は拭いていた。なんだ、やっぱり、家族なのではないか。

「兄上、わたし、日本へ戻ります」
「そうですか、よかったです」
「ええ、ですがそのまえに少しだけ時間を下さいな」
「ゆっくりどうぞ、私は外で待たせてもらいますから。それでは中国さん、また」

日本が出ていった部屋はまるで嵐が去ったように静かになった。

「兄様」
「なにあるか、琉球」

「わたし、全部聞いていました。最初から。兄上さまに刃を向けられて、アメリカさんに見つけていただいて、兄様と再開出来て、凄く凄く嬉しかった。兄様はわたしのこと、お分かりにはなられていないようでしたけど」
「そ、それは!初めて琉球に会ったときも今の姿だったから小さい頃の姿なんて、知らなかっただけある!そうじゃなかったら…」

小さく、笑みが零れる。

「なっなに笑ってるある!」
「すいません。兄様、わたし、本当に嬉しかったです。兄様が、わたしの為にあれほど感情を出してくださるとは思ってもいませんでした。それも、兄上を相手に」
「それは、」
「でも、こんなに大事にしてくれているというのに、わたしはまた兄様を一人にしようとしているのです」
「…」
「一人は辛いです。またあの島に一人でいることを思うとわたしもとても怖いのです」
「なら!」
「でも、わたしはもう、日本です。琉球でも、琉球王国ではないのです。だから兄様、ごめんなさい。しばしお別れです。会いに来て頂けると、せつに願っております」

「…顔をあげるよろし、琉球」

「我は大丈夫ある、一人は慣れっこある!だから、おまえが寂しがらないよう、またおまえに会いにいくある。だから、また日本と頑張るある。」



そうだ、我は、最初から、一人なのだ。









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