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みんなを見つけて、みんなに生きる力を貸し、家族になった。けれどいつしか各々の考えを持ち、一人、また一人と我の傍から離れていった。だから、もう誰も見つけない、生きる力など貸さない、いつしか離れていくのだからと生きていくことに決めたのだ。




初めまして、あなたは中国さまでしょう。わたしはまだ名もなき小国にございます。そうですね、わなことでもお呼び下さい。それがわたしの名前になるのかもわかりませぬが今はわなこと。

目の前に現れた子供に目を点にさせる。こんなに小さな国を見たのは久しぶりである。最後に見たのは確か、香港であったか、と思い出していると甲高い声が会議室に響き渡った。

「遅かったじゃないか中国!待ちくたびれたんだぞ!」
「あいやーすまねーある。で、コイツはなにあるか。説明するよろし」
「ああ、そいつな、アメリカが拾ってきたんだよ」

なんでも、この小さき国はアメリカが日本ヘ行く途中の小さな島で見つけたらしい。それならば一番近いと思われる日本のところへ連れていくのが一番だろう。亜細亜特有の黒髪に黄褐色の肌、瞳も黒く、流暢な日本語を話す、おまけに来ている服も、着物である。これは日本の国土内の何かなのではないかと疑わしいほどに日本に似ている。中国にはそれが気に食わなかった。一番最初に家族となった日本。今は勝手に出ていってしまったきりの日本。昔の、出会ったばかりの日本と酷似するその国が中国の心を蝕んだ。

「君は本当に国なのかい?」
「まあ、国といえば国でしょう。しかしわたしはそのうち日本さまに吸収されるでしょう。わたしは日本領土の最南端にございますから。そうなってしまってはわたしは消えるでしょう、このまま消えてしまってもよかったのですが、アメリカさんに見つけついただいたのです。これもなにかの縁、わたしは一度でいいので世界というものを見てみたいです。」

つらつらと質問の答え以上の返答に唖然とする。こんなにも小さいというのに、こちらにこれ以上の質問をさせないような返答。見た目こそは小さいものの、中身は自分達のように何百年と歴史を持った立派な国ではないのかと思わせる様は、いつぞかの日本を思い立たせた。

「へー、わなこさまだ小さいのに凄いんだぞ!」
「ああ、俺もビックリだ。おい中国、亜細亜ってこんなやつばっかなのか?」
「…欧州と一緒にするんじゃねーあへん。亜細亜は皆利口、こいつも同じだけあへん。で、」

一体どうする。シンと静まり返った部屋に小さな溜息と共に中国の言葉が響いた。そうだ、これからどうするのだ。新しい国だといっても、これから消える可能性の方が高い国を、誰が、面倒をみると…

「あの、中国さま。わたし、何度かあなたさまにお会いしたことがあります」

「………は?」

なにを、言い出すのか。目の前にいる小さき国は中国にあったことがあるというのだ。しかし中国はこのような小さな国とは会ったことはない、はずなのだ。今日初めて会ったのだから。

「ああ、そういえばわなこは最初から中国の名前はしっていたよな!なんだ、ホントは知り合いだったんじゃないか!」
「しっ知らねーあへん!我はこんなやつ…」
「ああ、やっぱりそうでしたか。」
「なにが…」

ふわりと袖を回し、立ち上がったその小さき国は顔を伏せ、次に顔をあげると、その場にいた中国、アメリカそしてイギリスと同じくらいの姿に変わった。

「おまえ…琉球あるか」
「リュウキュウ?」
「なんだ、それがこいつの国名なのか?」

「お久しぶりです、兄様。ご無沙汰しておりました。先程までの幾多のご無礼お許しください。しかしながら、あの姿でいるよう、身分を明かさぬようにとわたしに説いてくださったのは兄様なのに、忘れてしまったようだったのでこのような形で約束を破らせていただきました。」


どうして今になって、また、おまえに会うことになっただろう。

どうしようもない運命に、中国は下唇を噛んだ。







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