How to go
名前
「あの……」
「なんだ」
「俺、ここにいていいんですか?」
「飼ってやると言ったろう。『鳥』は上の元にいるもんだ」
「はあ」

 人に拾われたのはすごくラッキーだ。しかも『鳥』と呼ばれる人は皆、こういう皇帝に『飼われてた』のだという。ってことは、何か元の世界に帰るための……帰れるのかどうかって情報もきっとあるだろう。
 男に、嫌な感じはしない。殺されたりすることは無さそうだし、ここが皇帝の住む場所なら、食うにも困らないはずだ。
 さっき、男は「上は『鳥』を愛で、『鳥』は上に富を齎す」と言った。けど、俺は男曰くのガチョウだ。愛でられるわけがないし、きっと富も齎せない。
 じゃあ、何のために、俺を飼うんだろう。

「お前は……ああ、そうだ。忘れてたな。お前、名は何と言う」
「え? あ、木下……」
「キノシタ?」
「木下、陽太です」
「キノシタヨウタ」

 男のイントネーションがおかしすぎて、自分の名前とは思えなかった。木下も怪しかった。

「えーと……陽太でいい、です。そういや、俺も……あなたの、名前、聞いてなかったですけど……」
「ヨウタか。俺の名は、皓と言う。もっとも、誰もそうは呼ばぬがな」
「……コウ、さん」
「皓でいい」
「あ! 陛下とかの方がいいですか?」
「皓でいいと言った。お前は、俺の『鳥』だ。俺に跪く必要もない」

 え。
 俺、そんなに偉いの!?

「さて、もう立てるか」

 男が立ち止まって、俺を地面に降ろした。いつの間にか、壮大な広間みたいな場所に来ていた。すげー……何坪あるんだここ。俺んち(3LDK)が全部入るぞ確実に。


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あきゅろす。
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