How to go
お出迎え
 悪戯が成功した子供みたいに楽しそうにしながら、あまりの驚きに口が半開きのまま固まってる俺に構わず、男がガンッと門扉を蹴った。び、ビビった……片腕空いてるくせに、横着な野郎だな!
 ガン、ガン、と何度か蹴ってるうちに、ゆっくりと門が開く。三国志に出てくる戦士みたいな格好をした男が二人、門の両端に直立不動で立っていて、真ん中にこれもやっぱり弁髪の男が跪いて頭を下げていた。

「遅い」

 男がそう言うと、真ん中の男は立ち上がってもう一度頭を下げてから微笑んだ。なんだか優しそうな人だ。青い、やっぱり中国風の着物を着てる。よくわからんが、文官っぽい感じがする。戦士っぽいのを見たあとだから、余計に。そういや、俺を抱きかかえてる男の着物はオレンジっぽい色だ。しかも何かゴテゴテと首飾りやら耳飾りやらも付けてるな……偉い人は着飾るのが世の常なのか。

「お出かけとは聞いておりませんでしたので。申し訳ございませんでした」
「なんだ、威宗か。お前の嫌味は利かんぞ」
「陛下、お出かけの際は忠吾をお連れ下さいとあれほど言いましたのに」
「忠吾に言ったら出かけられんだろうが」

 陛下……陛下ってことはやっぱり、この男が皇帝ってのは嘘じゃないらしい。しかし俺は江戸っ子や明治っ子ではなく、平成っ子であるので……イマイチとてつもなく偉い人にどう接したらいいのかわからない。日本の陛下への態度ってどんなんだっけ。えーと。
 ……。
 …………。
 ………………俺、抱っこされてる場合じゃないんじゃないか!?

「で、ソレは一体なんですか」

 イシュウと呼ばれた人が、微笑んだまま俺を指差して聞いた。うわぁ、目が……笑ってねぇよ。

「何に見える」
「はあ。街の浮浪児でも掠めてきましたか」
「俺がそんな事をするか。白露の草原でフラフラしていたんでな、捕獲した」
「捕獲、ですか?」
「ああ、コレは『鳥』だ」

 イシュウさんの目が、見開かれた。俺をジッと見つめて、ああ、と小さく声を漏らす。

「これは……『鳥』とは予想しておりませんでした」
「この格好にこの髪だぞ。予想くらいしろ」
「白露の草原ですか。よく見つけましたね」
「翼龍が見つけた。あいつらは目がいい」
「飼われるので?」
「ああ。朱夏宮が空いてただろう」
「畏まりました。早速準備をさせましょう」
「頼んだ」

 男はまたスタスタと歩き出した。イシュウさんはまた頭を下げて、こっちとは別の方向に歩いて行った。イシュウさんもあっさり飼うのかとか言ってたけど……こんな簡単でいいのかよ……。


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