「あの……『鳥』って俺の他にもいるんですか?」
「さて、どうだか。俺が知る限りだと、前回の『渡り』は二百年ほど前の話だが」
「に、ひゃく……ねん……」
「『鳥』はその希少さと美しさ故に、見つけた者には上から莫大な報償が出る。だから民は献上するし、記録にも残る。上は『鳥』を愛で、『鳥』は上に富を齎す……と言われているが、お前はどうも怪しいな」
前の『鳥』が現れたのが二百年前ってことは、その人はもう死んでるだろう。
それに、地球からやってきたとも限らない。なんせここは不思議ワールドだから、なんでもありっぽそうだ。
よくわからないが、俺もその『カミ』とやらに売り渡されるんだろうか。でもさっきこの男が飼うとかなんとか……。
俺への失敬な発言はとりあえずスルーして、情報集めに専念する。
「……えーと、カミってなんですか」
男が門の扉の前で立ち止まった。篝火に照らされて、やっと男の顔がはっきりと見える。
思わず息を飲んだ。
ハッとするほど端正に整った美貌が、そこにはあったのだ。
ニィ、と意地悪そうに笑った顔さえ、見たこともないほどに格好良くて。
俺は男を呆然と見つめていた。見蕩れてる自分に、気付きもしなかった。
「上とは俺のことだ。俺は、この大陸を統べる、皇帝だ」