How to go
乗り物じゃない
 死ぬかと思った。
 ほんの十数分が、何時間にも思えた。いっそ気絶でもできてれば良かったが、落ちたら確実に死ぬと思うとそれもできなかった。

 俺はあの後、男に引き上げてもらってあの恐竜の背に乗った。後ろに男もいるし大丈夫かと思ったんだが……平成生まれの俺の認識は甘すぎた。乗り物といえば車か電車か飛行機か船。そんな機械大好きな平成っ子が、動物(つーか恐竜だけど……)に乗るもんじゃない。馬にでも乗れたら話は別だったのかもしれんが。
 揺れない。速い。しかし、怖すぎるのだ。きっと落ちたら死ぬし、とにかく風がもの凄い。
 とにかく落ちないように手綱を握るのに必死で、風景を見たりする余裕もなかった。

「情けない。翼龍ごときで腰を抜かしたか」
「……」

 恐竜は無事、男の宮とやらの門前に着陸したが、もうすっかり腰も抜けきった俺は恐竜から降りることさえできず……不本意ながら、男に抱きおろしてもらった。その上、自力で立つこともできなかったので幼児のように抱きかかえてもらった。ああ……言葉も出んわ。

「お前、軽いなァ」
「そ、そうでしょうか」
「まぁ幼いから、こんなものか。それとも『鳥』は皆こうか」
「いや……あなたみたいな背格好の方もいましたけど……」
「ふうん」

 そういや恐竜に乗ってた時、後ろで男が『鳥』について何やら言ってたが、ちゃんと聞いてなかった。鳥って、俺の他にもたくさんいるもんなんだろうか。


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あきゅろす。
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