How to go
コウの謎だらけの行動
 帰り道。コウはずっと、無言のままだった。なにやら考え事をしているらしい。うーん、美形が黙ってると迫力があって怖いんだよな。メイオウさんが何度か窺うような視線を寄越していたが、それは綺麗さっぱり黙殺された。
 城に着いても、コウは黙ったままで俺を馬から降ろして下さった。そして何故かそのまま、コウは手を繋いだまま歩き出し……た。な、何故だ!? 何してんだこの陛下は!?
 どうやったらツッコミを入れられるだろうかと悶々と考えてるうち、コウのために用意されたらしい部屋に着いてしまう。この部屋、さっき俺とセキくんが居た部屋の五倍くらい広いし、十倍くらい豪奢だぞ。なんつーか、さすが皇帝様だよなぁ。
 コウはこれまたいかにも皇帝用ってな雰囲気の椅子に腰を下ろして、俺をすぐ傍のちょっと低めの椅子に座らせた。
 ……一体全体何がどうなっているのか……コウが何を考えてるのか、俺にはさっぱりわからん。つーか、俺、ここにいていいのだろうか。
 メイオウさんは、扉のすぐ横の辺りで直立不動の姿勢を保っている。あーあ、コウが無言だから、メイオウさん不安になっちゃってんじゃねーか。顔に『もしかして俺のせい?』って書いてあるぜ……お気の毒だ……。

「近う」
「は……」

 ようやく口を開いたコウが、メイオウさんを人差し指で招く。
 メイオウさんの顔色はもはや真っ青だ。覚悟を決めたように一度息を吐いて、コウに近寄る。おお……なんか俺までドキドキしちまうんですが……!

「鳴応」
「はっ」
「王州都の天主堂に仕える者達を洗え」
「御意に」

 メイオウさんはシャキッと返事をして、一瞬後に「えっ?」と顔を上げた。なんか、コウの命令が意外だったんだろう。

「……あ、あの……天主堂、でございますか?」
「ああ、流石に腐っても天主と言ったところか。不作の原因は天主堂に仕える官共の腐敗だな。罰のつもりなんだろうよ」
「……なんと」

 ……なんと。
 えーと……天主堂に仕えてる人達が仕事さぼってたから……この不作が起きたってこと、なのかしらん。つーか、コウは生麦生米食っただけで原因がわかっちゃったんだよな……? つーか天主様がわざと北方の穀物を不作にしたっぽいニュアンスだったか、今の。マジでこの世界、どういう仕組みになってんだ?

「なぁ、コウ」
「なんだ」
「なんでコメ食っただけで不作の原因がわかるわけ?」
「あァ、そうか」

 ちょい、と手招きされたので素直に立ち上がってコウのすぐそばに寄る。コウは無駄にいい声で「内緒にしろよ」と耳元で呟きやがった。激しく、鳥肌が……!

「作物は地の声の具現だ。火を通せば消えるがな」
「……またそれか」

 俺は若干げんなりしながら、鳥肌になった腕をさすって、コウを横目で見遣った。ちの声とやらを聞けるのが凄いってのは何となく理解できるんだが、肝心の「ちの声」の正体がわからんからな。うーんなんだろうな、ネイチャーボイスって感じか……うん、そんな感じがする。

「俺が生ものを口にせぬ理由はそれだ。うるさくてかなわん」

 確かに……生野菜最近食ってないとは思ったけども……そんな理由だったのか。普通に食文化の違いだと思ってたぞ。


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あきゅろす。
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