ざわ・・・ざわ・・・
……どっかのマンガみたいな雰囲気の中、俺はなんとなく背中に冷や汗をかきつつメイオウさんに促されるままに八百屋に足を踏み入れ、店内を見回した。うーん……八百屋っていうよりは、個人商店か。とは言っても商品のラインナップはすっごい淋しいんだが。
「百聞は、というやつだな。聞きしに勝る酷さだ」
「この村落で一番の商家でこの有様でございまして」
「うん。値も上がっているな」
「昨月までは庫から援助を行い押さえていたのですが、それも限界でした。小麦と米が昨年の倍程に」
「……倍か」
あー……やっぱ、これってば食料危機なのか。メイオウさんはコウに米やら小麦やらの援助をしてもらいたいんだろうか。そういや日本でも米不足の時は大問題になったって社会の先生が言ってたっけ。あの時は確か、外国の米を輸入したけど日本人は上手いこと炊けなくてすっげ非難囂々だったって話だ。食文化の違いは大変だぜ。
コウは(たぶん)米や麦を麻袋から掬い出して、しばらくジッと見つめていた。しかし見るだけじゃ足りなかったらしく、おもむろに数粒を口にポイッと放り込んで噛み砕きやがった。
「おい、コウ! な、生麦生米は! 腹壊すぞ!」
しかしコウはそんな俺の助言をマルッとシカトしやがり、生麦生米を飲み下す。あああ。つか、食う意味あるのかよ。
そんな俺の疑問をよそに、数瞬考え込んだコウは盛大に溜め息を吐いた。
「わかった。戻るぞ」
「……は」
お、おお……わかったって……?
メイオウさんの目にも、どこか不安そうな色が浮かぶ。店の外のギャラリーからも、ああ、という落胆の声が漏れ聞こえてきた。
俺はたまらず、コウの袖を引いてしまった。
「コ、コウ?」
「なんだ」
「何がわかったんだよ」
ちょっと皆さんの不安にあてられてしまった俺に、皇帝様はニッと人の悪そうな笑みを浮かべてみせる。
「この凶作の原因だ」
「え!」
「おおっ……それは!」
「詳細は城で話す。行くぞ」
「御意に」
コウはざっと踵を返し、不安から一転希望が見えたらしいメイオウさんも、そそくさと馬に急ぐ。
生麦生米を食って原因解明って……自然科学の力を無視し過ぎじゃねーか!まったくこれだから摩訶不思議ワールドってやつァよ!