How to go
城下町へ
 視察は白銀城の城下町をざっと見て回るだけらしく、移動はばんえい競馬に出そうなくらいでかい馬が使われた。もちろん乗馬なんかしたことない俺はコウと一緒に乗せてもらうことになったのだが……こ、怖ぇええよ馬!でかすぎるだろ!
 その上、俺はうっかり失念してしまっていたのだが、偉い人の言う視察ってやつにはお付きの人なんかもぞろぞろ付いてくるもんであって……俺みたいに観光半分の一般人がそう気楽に楽しめるものではなさそうだ。とにかく固いのだ、雰囲気が。
 しかも話半分しか聞いてないからよくわからないが、どうも北方国はかつてないほどの不作に見舞われてるらしい。わざわざ央の皇帝であるコウが、視察にこなきゃいけないくらいだ。よほど深刻なんだろう。
 でかすぎる馬をのんびり走らせながら、城門を出る。城の外に続く石畳の道を数分もいけば、雪に覆われた石造りの町並みが見えてきた。ぱっと見た感じ、大きい建物でもせいぜい二階建てってとこだ。

「どこもかしこも石だらけだ……しかも建物が低いね」
「木材では雪の重さに耐えられぬからな。建物が低いのは、地下に人が住んでいるからだ」
「地下?」
「そうだ。地下は地上に比べて温かいだろう」
「ふうん……そんなもんか」

 つーことは、ここらへんの家は全部地下もあるってことなんだな。なんか日本で地下のある家って金持ちっぽいイメージがあるからやたらすごく感じるけど、これも生活の知恵ってやつか。
 大きな街道から脇道に入ると、そこには市場的なものが広がってた。すごい活気があるわけじゃないにしろ、人が歩いてる。こっちに来てから、城に勤めてる人以外を見るのは初めてだ。殆どの人が毛皮帽子かぶってるからよくわからないけど、これ、男子は全員弁髪……なんだろうな……。夏に見たら壮観だろうな。
 ちょっと浮かれながら観察してたら、でか馬に気付いた人達が、ワッと声を上げた。おお、なんだ。

「陛下!」
「王もご一緒だ!」
「陛下が来て下さった!」

 あーなるほど、コウか。この世界で一番偉い皇帝陛下だもんな。そらテンションも上がるか。つか、なんで皆さんコウの顔を知ってるんだろう。
 俺の後ろで手綱を握ってたコウが片手を上げてその声に応えると、さらに歓声は増した。す、すっげぇな。

「コウ、人気者だったんだね……」
「……」
「陛下、こちらの商家でございます」
「ああ」

 俺の感想をさらりとシカトしつつ、コウが馬を止めた。なんだか他の店より倍はでかい、八百屋っぽい店だった。
 案の定足が竦んで、でか馬から一人で降りられなかった俺はコウに降ろしてもらったのだが……それ見て町の人達がザワッとしたぞ……。皇帝に降ろしてもらうのは、ま、まずかったか。


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