How to go
仲良しな二人
 セキくんは姉しかいない俺にとって『理想の優しいお兄ちゃん』そのものだった。たった二つしか歳は離れてないのに、ものすごく……何て言うの、包容力っていうか、安心感っていうか、落ち着き払ってるっていうか。そんな感じだ。

「陽太くん、そろそろ昼餉にしようか」
「うん、お腹空いた!」

 呼び捨てはどうしてもダメだとセキくんが譲らなかったので、俺の呼び名は君付けに落ち着いた。それならばまぁいいや、と俺も妥協したのだ。
 北方の話を色々と聞いたり、俺の朱夏宮での生活をちょこちょこと話してるうちに、午後になっていたらしい。セキくんが鈴を鳴らすとすぐに侍女さんがやってきた。

「昼餉の準備を……」
「昼餉でしたら、陛下よりご伝言がございまして。ご一緒に、とのことでございますが」
「そうか、わかった。陛下がこちらに?」
「はい、間もなくいらっしゃるかと」

 お、コウも一緒に食うのか。メイオウさんとの話し合いはもう終わったのかな。
 セキくんは兄ちゃんであるコウとの食事が嬉しいのか、ちょっとだけ顔を紅潮させながらいそいそと立ち上がった。うーん、セキくんお兄ちゃんっ子なんだなぁ。セキくんは十三歳からこの北方にいるらしく、コウとの思い出はそう多くはないのだそうだ。物心ついた頃にはコウは皇帝になってたって言うし。
 けど、コウを心から尊敬してるってのがビシビシ伝わってきて、いい兄弟関係なんだなぁと思える。あと九人くらいいるっていうコウの兄弟姉妹たちもこうなんだろうかねぇ。
 セキくんはコウを迎え入れるまで、立ったまま待っておくとすっげーご苦労様なことを言ったが、俺はいつも通り座ってお菓子をいただいておくことにした。今現在、この世界で皇帝を迎えるのに座ったままで居ていいのは、天主様と太后様と俺だけだって話だしな。特権は行使してナンボだ。
 セキくんが戸の前に突っ立ってから二、三分。ようやく扉が開いてコウが現れた。

「邪魔するぞ」
「陛下、お疲れ様でございます」
「おーお疲れさん」
「ああ」

 コウは俺の隣の椅子に腰を下ろして、ふうと溜め息を吐いた。二時間くらい会議してたんだ、そら疲れるよな。
 セキくんが円卓のちょうど向かいに腰掛ける。にこにこしながら、俺に話しかけてきた。

「陽太くん、魚は好き?」
「好きだよー」
「そう、よかった。北方は湖が点在していてね、名産なんだ。今の時季は氷の下の魚を釣るんだよ」
「へぇ……いいな、俺も釣りしたいな」

 そんな俺たちの会話を聞いていたコウが「随分仲良くなったな」と口角を上げた。へへ、そうだろ!俺だってやればできるんだぜぃ!


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