そこに並んでた北方のお偉いさん達に同じように挨拶と礼を取られて、俺は激しく気疲れしてしまった。すっげー大げさだぜ皆さん……。
城の中に招き入れられたものの、コウは早速メイオウさんと話し合いをするらしく、俺はセキくんに託されることとなった。
セキくんはかなり小柄なのに(あくまでこっちの世界の中ではだが)ものすごい剣の使い手らしく、ホームではないこの城でも近衛兵さんのガードなしで遊んでてもいいとコウから許可が出た。凄いぜセキくんかっこいい!
しかし……長旅の後にくつろぐ暇もないって、皇帝は大変ですなぁ。
セキくんに連れられてきたのは、暉黄城の俺の部屋より一回りくらい小さな応接間みたいな部屋だった。長椅子を勧められ、ふっかふかのそこに腰掛ける。
部屋の中は思ってた以上にあったかくて、帽子もマントももういらなそうだ。脱いで適当に椅子に置いてみたが……セキくんの指示で侍女さんに片付けられちまった……申し訳ない。
「陽太様。菓子はお好きですか?」
「好き好き!」
「それは良かった。では北方の銘菓と茶をお出し致します」
「あの……セキくんさぁ、タメ口……うーん何て言うんだ、俺のこと弟だと思ってさ、口調を砕いてくれない?」
俺のその提案にセキくんは目を見開いてそんなそんないけませんと首を振ったが、俺も折れてはやらなかった。なんか、セキくんとは同年代の小柄同士……マブダチ的なあれになりたい、そう思ってしまったので!
「なぁいいじゃんかぁ」
「そう言われましても」
「えーもう、なんで駄目なの」
「陽太様は陛下の鳥でいらっしゃいますから。いくら兄上とは言え、私は陛下の臣でございます。陽太様を敬う気持ちを常に持っていなければなりませぬ」
嗚呼無情……そうか、俺はセキくんから見れば『コウの鳥』以外の何者でもないのか。ユーイやたくさんの侍女さん達やイシュウさんが当たり前に俺を敬ってくれるように、セキくんだって俺を『鳥』だとしか見てくれないのか。
「……俺は、そんないいもんじゃないのに」
「陽太様」
「鳥って言ったって、何もできないのに」
この世界に来て初めて友達になりたいと思ったセキくんにまで仰々しく接されたのが引き金になったのか、なんか突然、涙出てきそうになった。理由も無く敬われるこの状況は、俺にとっては結構なストレスになってたみたいだ。
涙が零れ落ちそうになるのを必死でこらえて俯いてたら、しばらく沈黙を守ってたセキくんが俺の目元をそっと袖で拭ってくれた。くそっ、ガキくせぇ。
顔を上げると、セキくんがとても柔らかい笑顔を浮かべながら俺の顔を覗き込むように腰を折ってくれていた。
「陽太様、ではこう致しましょう」
「……ん?」
「兄上の鳥ならば、家族も同然。私には弟がおりませんから、陽太様が弟になって下さいますか」
「……うん!!」
きっとこれは俺の我が侭で、セキくんの優しさなんだろう。それでも俺はそれがすごくすごく嬉しくて。今泣いた烏がなんとやらってやつで思いっきり笑顔になってしまった。ああもうガキくせぇったら!