How to go
白銀の城へ
 俺たちが降り立ったのは、どうやら城の前庭だったらしい。
 セキくんに促されてしばらく歩くと、どでかい3階建ての建物が見えてきた。木造やら漆喰やらが多用されてる暉黄城と違う石造りの洋館っぽい建物、あれが北方国のお城なんだろう。雪景色だからかなぁ……灰色の建物は淋しい感じがする。
 少し前を歩くコウはセキくんと楽しそうに談笑してて、何となく話しかけ辛い。チュウゴさんや他の近衛兵の三人は黙ったまま俺たちの周りを取り囲んで歩いてる。
 いくらこの世界の人達がでかいとは言え、兵士四人は標準よりもさらにでかいんだろう、威圧感がハンパない。俺は勇気を振り絞って、一番近くにいたチュウゴさんに話しかけた。つーかチュウゴさんしか名前知らないので……仕方なくだが。

「あの、チュウゴさん。あれがお城?」
「はい、確か白銀(シロガネ)城と言いましたか。ご覧の通り、年の半分以上を雪に覆われておりまする故」
「ふうん……寒そうだね」

 チュウゴさんは俺のそのまんまの感想にハハッと声を立てて、小さい子どもをあやすみたいに、俺の頭にポンポンと触れた。

「夏宮様のお住まいよりは確かに。中に入れば然程でもありませんよ」

 ……チュウゴさんくらいでかい人にそんなことされたり敬語使われっと、無意識に身体が竦んじまうんだけどなぁ。そんな俺に全然気付いてもないしなーチュウゴさん。まぁいいんだけど。
 しばらく歩いて建物に近づくと、四メートルくらいはあろうかという大きな石の扉の前に、十人くらいが並んで頭を下げていた。

「お久しゅうございます、陛下。ご足労をお掛け致しまして」
「ああ、鳴応」

 メイオウ……というと、確か北方の国主だったかな。顔を見た感じ、六十代くらいの空手とかやってそうな厳ついおっさんだ。
 国主は属国の一番偉い人だが、皇帝に任命されるからもちろん皇帝よりは地位が低い。この国主と皇帝の家系に血縁関係はなく、優秀な臣下の中から選ばれるって話だ。メイオウさんもコウのお父さんの側近か何かだって聞いた。

「皙真に話は聞いておるが、今年は酷いな」
「はい、穀物は例年の八割ほどの収穫でございまして、炭も足りておりませぬ」
「うん。まあその辺りは……」

 コウがそこでお茶を濁して、ちらりと俺に視線を寄越した。そしてクイッと顎で……顎で呼びやがったぞこの野郎!俺はワンコか!
 いかんいかん、コウにイライラし始めると止まらないんだよな。常に偉そう……というか実際に偉いコウは、へりくだることも下手に出ることも一切ないものだから。俺がこの態度に慣れなければならん!

「なに」

 それでもちょっとムッとしながら返事をしたら、思ってた以上に無愛想な声が出てしまった。ああいかん……北方の人達に我が侭っ子だと思われちまう。
 コウはそんな俺の態度にはまったく構わず、メイオウさんの前で俺の肩を抱き寄せる。おお、メイオウさんもでっけーな!縦もでかいが、がっしり体型だ。若い頃は武官だったのかも、と思う。

「陽太、北方国国主の鳴応だ」
「あ、うん。こんにちは、陽太です」
「……ああ! 夏宮様ですな!」

 俺を見て訝しげな顔をしていたメイオウさんは、数秒かけて何者かを悟ったらしく、厳つい顔を崩してニカッと笑い、俺の手を取って片膝をついた。これが『鳥』に対する正式な礼だ。
 くっ、聞いてはいたけど仰々しいぜ……!


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