前に翼龍に乗った時は夜だったから、街の明かりくらいしか見えなかったのだが。
「うわーすっげぇ!」
ひと月前までグーグルアースの虜だった俺としては、真上から見た建物にも違和感はゼロだしむしろ楽しい。
それに、央はとても美しい国だった。緑に溢れる肥沃な大地と、水面がキラキラと光る川。そして山。ところどころに街が点在しているけど、自然と共存してる感じだ。
支えてくれてるコウへの信頼感が最初の日より増したせいか、この世界への興味が勝ったおかげか、ほんの数分で翼龍への恐怖は無くなった。なんせ揺れないし、前回よりも風を感じない気がする。
「なぁなぁ、あれ何? 城っぽく見える」
「あれは天主堂だ。天主への祈りを捧げる場だな」
「ふうん……」
なるほど、神社みたいなもんかな。それにしてもチョコチョコとキーワード的に出てくる天主様だが、俺は一度も像やら何やらを見た事がないぞ。偶像崇拝禁止なのか。
「あのさ、天主様の絵とかってあるの?」
「ああ……あるな。どこの家にも一つは肖像画があるはずだ」
「そーなの? でも俺、城で見た事ねーぞ」
「俺の城には無い。俺と天主は反りが合わぬ」
えー。皇帝のくせに、国中が信仰してるっぽい天主様に対してそんなんでいいのか。しかも反りが合わないって、どうなんだその理由は。
「彼奴はふざけた男でな」
「あ!?」
「なんだ」
ちょっと待て、何か、今の物言いだとさ!
「天主って、まだ、ご存命な……わけ?」
思わず振り返ってコウの顔を見上げた。コウは怪訝そうな顔をして、俺のもっともであろう疑問に、眉を顰めた。
「……お前は何を言っておるのだ」
「ええぇ!? マジで……いや、本当に生きてるの!? どっかに住んでるわけ!?」
「なんだ、由宇以に聞いておらぬか」
聞いておらぬよ!ちょっと!しっかり教えといてくれよユーイ!