How to go
ふたつの月
 何かの事情でモンゴルかどこかに捨てられたんだろうか、と思ってたのは夕暮れまでだった。
 日が暮れて、俺は「俺の脳みそはイカれた」のだと思い至った。昨日寝てるうちに、きっと脳みその病気になって、病院かどこかで眠ったまま空想の世界に飛んでしまってるんだと。
 俺の視界に飛び込んできたのは、大きすぎる月と、小さすぎる月。
 地球上では、およそ目にかかれない二つの月がそこにはあった。

「はは……冗談、だろ」

 力が抜けて、俺はへなへなと座り込んでしまった。
 歩き疲れて足が棒みたいだ。柔らかい草の上で、抱き込んだ膝に顔を埋めた。
 たいぶ歩いたはずなのに、景色はほとんど変わっていない。地平線の先まで、草原は続いている。



 何が、どうなってるんだ。
 ここは地球じゃない。俺は夢を見ていない。
 そして、ここには誰もいない。



「俺が何したって言うんだよぉ……」

 ぼろぼろと涙が溢れてきた。
 昨日まで、俺は平々凡々な日本の中学3年生だった。夏には受験勉強を始めなきゃとか、明日の体育はサッカーだとか、A組のあの子が可愛いとか。そんなことしか考えてなかったし、根が小心者だから悪いことなんか一つもできっこなかった。それなのに。
 なんでこんな、わけのわからないことになってるんだ。
 ファンタジー小説ならわかる。ある日突然異世界に召還されるのは、自分じゃ気づいてないけど特別な力を持った勇者だ。
 けど、俺は勇者なんかじゃない。ごく平凡な日本人だ。魔法も剣も使えないし、自慢じゃないが体力だってない。



 それなのに、どうして俺は、こんな世界にいるんだ。


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あきゅろす。
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