How to go
お出かけのお誘い
 コウは夕日が完全に沈んだ頃にやってきた。
 そういや、この世界にも電気らしきものはあるらしく、夜も煌々と明るい。電気というか……特殊な石に昼の光を貯めておけるのだそうだ。地球にあったら便利だろうなぁ、これ。そんな調子で、この世界では便利な石が当たり前に存在する。延々燃え続ける石とか、溶けない氷みたいな石とか……一番驚いたのが『水が移動する石』だよ……なんでも、大きな石を細かく砕いて一つを井戸に、他のを水がいる場所に置いておくと、井戸から他の石に水が移動するんだってさ。ファンタジーにも程があるだろ。ファンタジーワールドで生まれていないせいか、俺には扱えないのが気に食わないけどな。

「あー、お疲れさま」
「ああ」

 コウはどさっと椅子に腰掛けて、ユーイがすかさず差し出したお茶を受け取る。偉い人の偉そうな態度にもそろそろ慣れてきたが、やっぱりコウは偉そうだぜ。

「今日は何をしていた」
「……お父さんですか」
「なんだ」
「いや、なんでもない。今日はユーイに歴史教えてもらってた」
「そうか」

 毎回父親みたいなことを聞くコウには精一杯温かい視線を、ユーイには感謝の念を込めた視線を送りながら、どんどん運ばれてくる食事が揃うのを待った。こっちのご飯は俺の舌に合うので、毎日楽しみにしているのだ。
 俺は本当にラッキーだよな。異世界に飛ばされちまった不運を思えば、このくらいのラッキーは当然あってしかるべきだが、歴代の『鳥』は食事の面でも苦労が多かったって言うからなぁ。やっぱ地球以外から渡ってきた人が多かったんじゃないかと俺は踏んでいる。
 相変わらず皇帝に相応しい贅沢な食事に舌鼓を打ちつつ、食べ進めた。俺がこれ美味しいと言えば、食事に出る回数も増える。至れり尽くせりだ……。

「ああ、陽太。明日、お前も出かけるか」
「ええ! どっか行くの! 行く!」
「北方だ。俺の属国だな」
「え、それって遠くないの」
「翼龍で一刻ほどだ」
「……」

 ……こっちの一刻って2時間くらいだから、あの恐竜もどきに2時間も乗らなきゃならんのか。怖すぎるだろ。でもお出かけの誘惑はとても魅力的だ。なんせこの城に来てから一度も外に出てないからな。
 俺がウンウン唸ってると、コウがくつくつと笑いながら「翼龍は怖いか」と言った。このいじめっ子め!

「前のように、俺にしがみついていたら良いだろう」
「くそっ……しがみついてはなかったぞ!」
「そうだったか。北方には俺の弟がいてなァ、お前と同じ年頃だ。気が合うと思うが」
「へぇ。コウの弟か」

 そうだ。4つの属国には、コウの従兄弟やら兄弟やらが政治の中枢にいるんだっけな。たぶん、属国の王様を見張ってるんだろうけど。


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