How to go
三食、おやつ、昼寝付き
 言葉の苦労は無いとはいえ外来語や略語や擬態語は通じないのだと、経験則でわかっている。ムカムカも通じていないんだろう、ユーイの頭の上にはてなマークが浮かんでんのが見えたが、解説するのも面倒で、黙ってお茶を啜った。
 そりゃ、コウとの食事は、楽しいと言えないこともない。城にいる連中は俺が『鳥』というだけでへりくだった態度を取る。それは中流家庭育ちの俺には、ちょっと慣れないものなのだ。申し訳なさ過ぎるせいか、あんまりいい気分にもならないし、いらん遠慮もしてしまう。
 そんな中で、コウとは対等に喋れるから気は楽なのだ。楽なのだが……俺はそもそもイジられキャラではないから、ムカつくことも多い。
 いつ見ても小さいなハハハ、なんて頭を撫でられたり、雀に似てるなァお前なんて言われて、気分いい15才がいたら会ってみたいわけですよ!雀がガチョウよりマシだとでも思ってんのかあの野郎!

「陛下は陽太様のことを気に入ってらっしゃるのではないかと思いますよ」
「それは、俺が鳥だからだろ」

 ユーイはおかわりのお茶を注ぎながら、俺に優しく微笑んでくれる。ああ、ユーイは癒し系だ……。

「陽太様。陛下はどなたに対しても、陽太様のように接するわけではございません」
「知らんがな」

 ハッ、脊髄反射で突っ込んでしまった。しかしこれは本音だ。俺は、イシュウさんとユーイと俺以外に接するコウを見たことが無い。つーか、この部屋以外でコウを見たことがないのだ。三人いるっていう奥さん方にもまだ会っていない。
 そうなのだ。一言ご挨拶した方がいいんじゃないか、と以前イシュウさんに聞いたら「陽太様と后妃様方では身分が違います。挨拶は必要ありません。向こうが来るならまだしも」とか笑顔で言われた。おいおい俺はどこまで偉いんだと思ったもんだし、向こうからご挨拶なんて話はついぞ聞いていない。三食おやつに昼寝付き……ニートもびっくりの快適生活を送ってるもんだから……俺、嫌われてるのかも知れないな。

「はぁ……」

 ぐるぐると考え込んで深い溜め息を吐いた俺に、ユーイは苦笑しながら、お菓子をいくつか皿に盛って差し出してくれた。俺の気に入っている、胡椒のきいた煎餅みたいなやつだ。それをバリバリ食べながら、ひとまずはコウの奥さんたちに対する態度をリサーチすることにした。

「コウって奥さんと上手くいってんの?」
「……」
「え、上手くいってねーの!?」
「陽太様、后妃様方の役割というのは、子孫を残すという一点につきまする」
「いや、そりゃそうだろうけど、仲良いに越したこたぁないだろ」
「それは……陛下にお聞き下さいませ」

 あ、この野郎、逃げやがったな。


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あきゅろす。
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