How to go
小さい子
「朝に見たら少しはマシかと思ったが、そうでもないな。幼いままだ」
「……」
「お前、本当に歳を騙ってはいないのか」
「じゅうごさいですっ!!」
「ふうん……まァいいか。ほら、起きろ」

 そう言ってコウは俺の両脇に腕を差し込んで幼稚園児みたいに抱き起こし、そのままベッドから降ろして下さった……さらに屈辱的だ!
 所在なくベッドのそばに立ち尽くす俺をしげしげと上から下まで観察し、何故か髪の長さを確かめるみたいに手で梳いてから、コウは「うん」と呟き部屋から出て行ってしまった。なんだったんだ、今のは……わけがわからん。

「どうしろと」

 人を叩き起こしておいてなんなんだあの野郎。怒りより、混乱が先にくる。なんせここは異世界だし、俺の知らない習慣とかがたくさんあるはずだ。どんな行動も欠かさず説明して欲しいのだ。
 まぁしかし……よっぽど爆睡したんだろう。目覚めはあんまり良くなかったが、身体と頭はスッキリしている。ついでにすごく腹が減っている。昨日何も食ってないから、当然っちゃ当然なんだけど。うーん、切実に、朝飯を食わせてほしいな……部屋出れば誰かに会えるのかな。
 そろっとコウが出て行った扉(残念ながら、この部屋には4つも扉があってだな……昨日どれから入ったのか全然覚えてない)の方に行ってみると。

「……ワォ」

 そこは外ではなく、十畳くらいの棚ばかりある部屋だった。中にいたコウが服を何着か手に持って、棚を開け閉めしている。うーむ、まさかとは思うが衣装部屋とか、なんだろうか。セレブって凄いな……生活格差を感じざるをえん。

「そのなりでは食事もできぬ。これに着替えろ」

 とっくに俺がいるのに気付いてたらしいコウにぽいっと渡されたのは、最終的に決定したらしい紫色の服だった。広げて身体に当ててみる……これは何て言ったらいいんだろう、コウやイシュウさんが着てるのとも形が違う。召使い用とかなんだろうか。
 まぁ細かいことは気にしてもしょうがないので、素直に着替えることにする。なんせ一昨日の夜から着替えてない。風呂にも入りたいが、小心者なので自発的に発言ができん。とりあえず着替えを与えられたのはありがたいしな。
 そう、俺はさっさと自分で着ようとしたんだが……。

「……」
「ほら、袖を」
「……」
「うん、ぴったりだな」

 俺がパジャマを脱いでる間、紫の服を預かってたコウが、甲斐甲斐しく俺に着付けてくれたのだ……ああこの人、完璧幼児扱いだよ……。


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あきゅろす。
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