How to go
昨日、今日、明日。
「天主って誰ですか!」
「この世界を作り賜うたお方でございます」

 なるほど、神様みたいなもんか。神様の茶目っ気とやらで俺は異世界に飛ばされたっていうのかよイシュウさん。そんな理不尽があっていいのか!
 それに、コウだってきっと可愛くて美しい女の子の『鳥』の方が嬉しかったに違いないのに。どうして俺なんだ。つーか俺は本当にこの人たちの言うところの『鳥』なのか……?

「前例がございません故、陛下がどのようになさるかは存じませぬが……まぁ恐らく、歴代の『鳥』とそう変わりはありますまい」
「はぁ」
「お疲れのところ、長々と申し訳ございませんでした。詳しい話はまた後日……ああ、明日から陽太様に僕(しもべ)をお付け致しましょう。色々と学ばれるのがよろしいでしょうな」
「しもべ……!? あ、あの、別に俺……」
「私はこれで。お休みなさいませ」

 イシュウさんって……俺のことあんまし気に食わないんだろうか。俺と言う存在を疑ってるというか信じてないというか。あの笑顔は拒絶に近いものを感じる。
 今聞いた話を反芻しながら、ふらふらとベッド(まさかの天蓋付きだ……)に向かい、倒れ込んだ。
 鳥、皇帝、男、女、三人の奥さん、暉黄城、天主、それにしもべ……。色んなことを聞きすぎて、うまく思考が流れていかない。

 昨日と違う今日。今日と違うであろう明日。
 目が覚めた時、もしそこが日本の俺の部屋だったらどんなにいいだろうか。そうなればいい。
 そんなことを考えながら、目を閉じた。

 一瞬で意識は遠のき、俺は眠りの世界に引き込まれていった。





 眠い、眠いんだって……あと五分……うう、五分だけでいいから……!揺さぶるな!

「おい、いい加減に起きたらどうだ」
「うっせーぞ父さん……俺はねみぃんだよぉ……」
「うっせえ? お前、言葉遣いが悪いな。街の者のようだ。それに俺はお前の父ではないぞ」
「あーもう……わけわかんねーこと言ってんなよ……俺は眠い……んだ、あッ!?」
「起きたか」

 うっすらと瞼をあけて、例えば、目の覚めるような美形の顔が目の前にあったら。
 そら一瞬で目が覚めるだろ。そうするしかないだろ。飛び起きた俺の反応は正しいだろ。
 太陽の光のもとで見たコウは、昨日に増して見目麗しい。たくさん刺繍の入った橙色の着物に、翡翠っぽい首飾り、弁髪は綺麗に編み上げてある。

「あ、う、あ……お、おはようごじゃいます」

 ああ、噛んだ……死んでしまいたい……。
 コウは器用に片眉だけくいっと上げて、挙動不審な俺を見つめてきた。ヒィ、なんだ!俺なんかしたか!寝ぼけてたくらい許してくれ!


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あきゅろす。
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