いやしかしでかいな。この……なんだ、城か?うん、城(仮)はでかい。廊下は幅広で長いし、扉の大きさもでかい。
イシュウさんは結構なスピードでさっさと歩いて行ってしまうので、俺はついていくのに小走りしなきゃならなかった。絨毯的なものが敷いてあるから裸足で歩いても平気なんだけど、疲れた俺の足には辛いものがある。しかし「ゆっくり歩いてください」とは言えん……なぜならイシュウさんが怖いから……。
「ヨウタ様」
「おわっ」
突然ぴたっと立ち止まったイシュウさんにぶつかって俺は弾き飛ばされそうになったが、原因であるイシュウさんが無事支えてくれた。危ねぇ……。
「あ、ごめんなさい。ありがとうございます」
「いえ」
イシュウさんを見上げると、例の得体の知れない微笑みを浮かべたまま俺をジッと見つめていた。な、なんだ……?
「ヨウタ様は、こちらの宮にお住みいただくことになります」
フイ、とごく自然に目を逸らしたイシュウさんが、朱色の扉を開いた。中を覗くと、だだっ広いリビング的な部屋が見える。えーと、ここはその宮とやらの玄関なのか。イシュウさんの言い方じゃ、他にも宮ってのがいくつかあるんだな。そういや俺はシュカキュウで飼うとかなんとか言ってたっけ。
「えっと……はい」
「詳しくは追々ご説明致しますが、少しだけ大事なお話を」
「あ、はい」
イシュウさんは俺を部屋の中に入るように促して、自分も後に続いた。そういう風習なのか、扉は開けっぱなしだ。
リビングの窓際においてあった長椅子に腰掛けるように言われ、素直に従う。東洋風なのに、座り心地は高級ソファみたいにフッカフカだった。イシュウさんはそばにあった普通の椅子に座って「さて……では、途中、わからないことがあればご質問下さいませ」と、微笑んだ。
だから、その笑顔、怖いんだって……!