How to go
事情聴取
 広間には長い机が一つと椅子がずらっと並んでいた。その一番端の方に座るように言われ、おとなしくそっちに向かう。座って初めて、自分がもの凄く疲れていることに気付いた。そりゃそうだ。ずっと怖かったし、不安だったし、歩き疲れた。腹は減りすぎててよくわからなくなってる。
 男……いや、コウがお誕生日席(たぶんそこが上座なんだと思う)に座ると、すぐにお茶らしきものが運ばれてきた。遠慮せずに飲んでみると、慣れ親しんだウーロン茶っぽい味だったので、ちょっとだけホッとした。

「うめー」
「うめえ?」
「ん? あれ、通じないのか……美味しい、デス」
「お前、言葉は話せるようだが、読み書きはできるのか」
「……こっちの見てみないとわかんないです」
「ふむ。まぁ追々だな」

 お茶飲んだらちょっと気分が落ち着いた。そして落ち着いたゆえに……色々余計な不安が頭をよぎる。俺は一体、日本ではどういう扱いになってるんだ。行方不明?家出?誘拐?それとも、神隠しか?
 だって寝てる間にこっちに来てしまったんだ。家の中で、何も持たずに忽然と消えるとか。絶対、近所の七不思議になってる。きっと警察とかマスコミとか……ああもう、お父さんお母さんお姉ちゃんごめんなさい!
 いや、待てよ。俺、あっちで寝てる間に突然死でもしたんじゃ……ないか。肉体やら記憶やらがあるのはアレだが、ここは死後の世界とか。それだったらこの摩訶不思議な状況もちょっとは理解できる。あーでも、俺、パジャマのままだし……どうせ死後の世界だって言うんなら、一張羅に変わっててもおかしくないよなぁ。
 そんなことをつらつらと考えてたら、イシュウさんが何やら本を片手にやってきた。男に頭を下げてから、俺の向かいに座る。

「朱夏宮の準備はあと半刻ほどで調います。それまでは……陛下、この方のお名前は」
「ヨウタだ」
「では、ヨウタ様。少しお話をお聞かせください」
「はあ」

 イシュウさんに聞かれるまま、俺はここに来るまでの経緯を説明した。寝て起きたらあの草原にいたんだとか、この服はパジャマだとか、半日歩いたとか、川の水は初めて飲んだとか。
 イシュウさんが持ってきた本は、どうやらメモ帳だったらしい。筆ペン的なものを片手に、何やら書き留めている。よく見えんが、漢字っぽい文字ばっかりだ。あれ、俺にも読めると……いいけど。
 俺がイシュウさんと話してる間、コウは殆ど何も喋らなかった。時々「ほう」とかなんとか言ってたが、聞き役に徹してた感じだ。

「ご年齢は?」
「あ、中3です」
「ちゅうさん……というのは、何ですか」

 そ、そうか。ここじゃ俺の社会的身分なんて言っても年齢まではわかんないよな。最近、いくつ?って聞かれても歳では答えないから忘れてた。

「えーと、あっちの学校……中学校ってとこの三年生で……略して中3です」
「なるほど、学生でいらしたんですか」
「はい。15才です」
「……あァ!?」

 おお、なんだ!?


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