夢ならどうか覚めてくださいと、もう何度願ったことだろう。
もう半日、人に出会ってない。見慣れたコンクリートジャングルも見当たらない。どこまで行っても、ここにあるのは草原だけだ。
鳥も虫もいる。さっきイタチみたいな動物も見かけた。
それなのに、人がいない。
俺は昨日、自分のベッドで眠ったはずだった。なのに、起きたらこの草原に横たわっていた。もちろんしばらくは夢だと思って、見たこともない広々とした草原で思いっきり暴れていた。ぬけるような青空とどこまでも続く緑、頬をなでる風は最高に心地よかった。
けど、だ。
くたくたになるまで暴れて、うたた寝をした後。
目覚めた俺を待っていたのは、まだあの草原だったのだ。
「……ゆめ、だよな?」
呟いた俺は、けど、どこかでこれは夢じゃないとわかってもいた。
だって、さっき遊んでた身体はひどく怠いままだし、裸足の足は泥んこ。それに、無意識に抓った頬が、すごく痛かったから。
夢だって自覚した夢は、自分の思い通りに操れるって話を聞いたことがある。
それなのに、ここは何も俺の思い通りにならない。
「どこだよ……ここ、どこだよっ!」
答える声は、もちろんどこからも聞こえなかった。