あまい花

 恋愛には三つの「ing」が必要なんだそうだ。曰く、タイミング、フィーリング、ハプニング。

(まさに……ハプニング、だよなぁ)

 いくら小山田が、神様に愛されたような人間だからって。そんな奴になんでだか物凄く好かれてる気がする……気のせいじゃないと思うのだが、まぁとにかくそれだからって。
 男相手に恋愛感情を抱くってのは……俺の中では人生最大のハプニングだ。
 いやしかし、あんな……殺し文句に近い言葉を聞かされて、恋に落ちない人間がいたらお目にかかりたい。絶対無理だ。逃げ道は全部塞がれてて、その上ウェルカムボードまで準備されてるようなもんだあれは。

(どうすっかなぁ)

 小山田とコースケの会話を盗み聞きして、あまりの衝撃に思わず逃げ出してしまった俺は、ぼんやりしすぎてうっかり電車の路線を間違え、間違えて乗った山手線では無駄に二周してしまった。終点がない電車はこれだから困る。そして今は、フラフラと街を歩いていた。なんとなく、一人きりにはなりたくない気がしていたし、家族のいる家では思う存分悩めないと思ったからだ。
 どうするか。俺も小山田に好きだと言えばいい。単純なことだ。

 でも、やっぱり、怖いな、と思う。
 小山田とそういう関係にある自分を、これっぽっちも想像できないことが、怖い。


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