あまい花

 恥ずかしさのあまりジタバタしてしまった俺の背中をコースケが落ち着かせるように軽く叩く。コースケはあんまり人前では吸わない煙草を取り出して、火を付けた。どことなく甘いその匂いに少し気持ちが落ち着いていく。

「あっさり断ったわけじゃないんだよな?」
「……ちゃんと考えるってゆった。だって、あんなの……断れるかよ」

 あんな真剣な目で、あまい瞳で見つめられて、どうやったらあっさり切り捨てられると言うのだろう。

「なぁ、マサ。じゃあ真剣に悩んで、ちゃんと考えてやれよ。小山田くん、本気だったろ」
「わかってるよ。それは、わかってんだ…………でも、ほら、俺オトコノコでオンナノコが好きなんだもん」
「まあ……男だからダメって言うマサの言い分もわかるけど。お前、小山田が女だったら、きっと即答でオッケーしてるだろ?」
「……」

 そう言われてみて初めて、もしも小山田が女だったなら、と想像してみる。キラキラ可愛くて頭のいい、誰からも好かれる女の子。
 ……ああ、困った。ものすごくタイプだ。

「ううううわぁもう俺って奴ァ……」
「ふははっ、悩め悩め!」

 他人事だと思ってコイツは……!いや他人事だけどさ、もっとこう、親身になってくれたっていいんじゃないか。声のトーンもバリトンくらいにして欲しい。眉根も寄せて神妙な顔してて欲しい。少なくとも笑顔はいらん!
 だがしかし、このイケメンの親友はやっぱりひと味違ったわけで。

「悩んで悩んで、そんでお前が後悔しない結論を出したら、どんな答えでも俺はお前の味方をしてやるよ」

 煙草を踏みつぶしながらそんなカッコいいことを言ったコースケの男前さにうっかり惚れそうになった。いかんいかん!俺ちょー弱ってる!


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あきゅろす。
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