あまい花

 考えてみれば昔から、俺のピンチを救ってくれたのはいつもコースケだった。大学受験で志望校に迷った時も、高校時代の恋愛相談も、中学で友達ともめた時も、いつもコースケが助け舟を出してくれたのだ。
 今日だってまた、偶然にしろ何にしろ、過去最大の混乱に見舞われている俺のピンチに駆けつけてくれている。なんていい奴なんだ。

「……いやぁコースケくん、俺本当に君が好きだな」
「え、なに、かなり本気でキモいんですけど」
「もー本当さぁ……俺どうしたらいいのかしらねぇ」

 コースケが俺のそばに腰掛けた。夜になっても街の気温は下がらず、生温い空気が肌をべたつかせている。
 俺は何をどこから切り出したものか、と考えながらコースケの顔を見つめた。あー俺がこんくらいイケメンなら、人生の悩みは三割くらい削減される気がする……。

「で、何があったって?」
「……お前、さてはわかってて言ってるだろ」
「まぁ九割九分くらいはそうじゃないかなぁと思ってるけど」
「……」
「小山田くんに告られたんだろ」

 ズバリ言うわよ、とばかりにコースケが人差し指で俺を指差して、サングラスを外してニッと笑う。くっ、何かの無駄遣いだぞこれ!

「正解っしょ」
「……うん、まあ、その、なんだ……正解です、よ」
「ははっ、小山田くんって行動が機敏だなァ」

 つーか……男に告られたっていう俺的人生の一大事はコイツにとってはそんなに重要なポイントじゃないんだろうか。相手が小山田だからそうなるのか。

「なぁコースケ。俺は小山田に好きだって言われるまで、一ミリだってそんなこと思い付きもしなかったんだ」
「んー……まあ普通はそうじゃね? お前は男で、相手も男で、しかもあの小山田くんなんだし」
「だよなぁ。俺、わけわかんなくなっちゃってんだけどね。お前……知ってた?」
「知ってたっていうか、こないだの船曳さんの一件を聞いてちらっとそう思ったんだけど。夕方に小山田くんに相談されちゃったから」
「なっ……どんな!?」
「真知が好きなんだけど、どうしたらいいかなって」
「うわぁ……!」

 小山田ぁああああ!なにお前コースケにあっさり相談しちゃってんの!
 そら俺と小山田の共通の友人って言ったらコースケしかいないわけだけど、何となくこっ恥ずかしいじゃないか……。


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あきゅろす。
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