あまい花

 俺はしばらく、公園のベンチに座り込んでいた。小山田には「ちゃんと考える」と言ったものの、何をどう考えたらいいのかさっぱりわからなかった。だって俺は男で、小山田も男で、俺は男を好きになる趣味はない。小山田を嫌いかと問われれば、そりゃ好きだと答えるだろう。でも、それとこれとは話が別だ。全然、別だ。

(小山田は俺と……恋愛がしたいのか?)

 そう考えただけで、ぞわりと背中が震えた。
 なんでだ。なんで、俺なんだ。望めばどんな女の子だって手に入れられるはずなのに、なんで俺なんかを好きになったんだ。
 同じことをぐるぐると考え続けていると、携帯が震えた。もし小山田だったら……と、一瞬、確認するのが怖くなったが、恐る恐る液晶をのぞくとそこにはコースケの名前があった。ホッとしながら通話ボタンを押す。

『あ、俺』
「……おー」
『なに、元気ないじゃん』
「……まぁ、な。今悩んでんだ」
『……ふうん。真知、今どこにいんの?』
「映画館の横の公園」
『お、近くじゃん。行くわ』
「お前、街にいんの?」
『そーそー、CD見に行ってた。じゃあ行くから』
「わかった」

 そうだ、コースケ。コースケは小山田から話を聞いてるっぽかった。あいつに「男に告られたんだ、どうしよう」なんて相談は本当ならしたくないが、背に腹は替えられない。男に……つーか小山田に告られたこの一大事は誰かに相談しなければ解決できないような気がしてならん。ああ、本当になぜこんなことに。
 とにかくコースケに相談しようと心に決めながら、俺の脳裏にふと、さっきの小山田のあまい瞳がよぎる。思い出した瞬間、わぁっと叫びながら頭を抱えてジタバタとしてしまったのも……許して頂きたいほど、あれは強烈な出来事だった。あんな目で!俺を!見ないで欲しい!

「怪しすぎるよ、真知くん」
「……うっせーボケ!」
「えー、なんでキレてんの!」

 ジタバタしてた俺に冷静に声をかけてきたのは、夜なのにサングラスで顔を隠すイケメンの幼なじみ、コースケだった。


[次へ#]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!