あまい花

「よっすお待たせ〜!」
「よっす」
「どうもどうも」

 金曜日、二十時半。賑わった駅前のコンビニの前に、法学部のイケメンが二人立っていた。ああ、すっげー目立ってるぞこいつら……。
 さすがに一次会から他学部生を呼ぶのはあれなので、二次会が始まってから迎えに来たのだ。

「どう、盛り上がってんの?」
「盛り上がってるっつーか、女子がすげーよ。早く呼んでこいってうっせーの」
「はは、モテる男はつらいね。ねぇ小山田くん」
「そうだねぇ大久保くん」

 どうも軽く二人で飲んできたらしく、いつもよりどっちも陽気な感じだ。まぁ、コースケが鬱になってないだけ助かった。ちなみに俺は酒があまり得意ではないのでほぼ素面のままだ。
 つーかこいつら二人とも君付けで気持ち悪いな……そろそろやめたらいいのに。

「おし、行くか」
「お〜」

 イケメン二人を引き連れて、居酒屋に戻った。百名弱の人数が押し込まれた広い座敷の障子を開け、俺たち三人が中に入ると、女子の黄色い悲鳴が飛んだ。うっせー……お前ら座席指定争いくらい、先に済ませてろと言いたい!

「……どこ座ればいいのかな」
「……俺、哲学科女子のとこがいいな」
「……とりあえず好きなとこ行けよ。俺は哲学科男子と戯れておくから」
「ええっ、マチ、俺と座ろうよ!」
「やだよ」

 酷い!と叫ぶ小山田を無視して、俺は俺の指定席に戻った。哲学科男子は俺が席に座るやいなや、「大井くんを今度こそ精神世界から抹殺する決議に賛成の方」と採決を取り出した……しかも全員一致で可決だ……酷い……「俺の苦労も察して下さい」と言っても誰一人同情してくれない……酷い……。


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