あまい花

 タイカレー屋を出てから、俺と小山田は行く当てもなく街をふらついていた。俺は途中途中でカラオケ、ダーツ、ビリヤードと暇な大学生の定番コースを提案してみたが、小山田が難色を示したからだ。どれも上手そうなのにな。

「それより、もっといいとこ行かない?」
「え、風俗とか? 俺、金ないぞ」
「……マチくんは結構エロなんだね」

 あ、ロマンチストでピュワワな小山田に軽蔑の眼差しを送られた……しまったぜ。

「いやぁ、ほら、コースケ! コースケが! 十八歳の誕生日に! 連れてってくれて!」
「大久保くんのせいにすんなよー」
「一度だけならいいじゃないか!」
「不倫親父の言い訳みたいだなー、俺ガッカリ」

 小山田はふぅとため息を吐いて、やっぱいいとこ連れてくのやめよーと踵を返してしまった。あわわ、どうしよう。瞬時に「いいとこ=風俗」の等式を弾き出した俺の脳みその馬鹿!
 スタスタ歩いて行こうとする小山田を急いで追いかけて、鞄をひっつかんで引き止めた。

「あ、ねぇ、ちょっと待ってよ小山田くん、どこ行くつもりだったの」
「マチくんエロだから教えてあげない」
「またまたそんな、小山田もエロ好きだろ!? だって男の子でしょ!?」
「そりゃ好きだけどさぁ」

 お、なんだ。案外あっさり認めたな。

「俺はたぶん、好きな子にしか欲情しないんだと思う」
「……! よ、よくじょうって……!」
「え? なに?」

 だって、こんな真面目な顔して欲情とか言う男、見た事ないぞ俺は!こいつ、全然ピュワワじゃない!
 高校時代に一時期、ムラムラしてきたをヨクジョウしてきたと言うのが友達連中の間で流行ったことがあったけど(男子高校生は猿で馬鹿だからな)、あれと、今の小山田の台詞は全然違う響きに聞こえた。
 あーこれが男の色気っつーのか。小山田ファンの女子が聞いたら、失神でもしかねんエロさが……ハッ、いくらとてつもなくカッコいい奴とはいえ、男にエロスを見出してどうするんだ俺!正気に戻れ!

「あー……いや、なんでもない。で、どこ行くって?」

 赤面しかけた顔をごまかすために俯きながら小山田の横に並び、もう一度尋ねてみる。小山田はもう一度ふぅ、とわざとらしくため息を吐いてから苦笑して。

「うちくる?」

 と、そう言った。


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