あまい花

 俺は文学部に通っている。文学部は女子が多い。とても多い。
 昼に小山田とダラダラとダベっていた俺は四限目の授業後、文学部女子に周囲を囲まれていた。みんな可愛いのに、ハンターの瞳で「さっき見たけど、大井くんって小山田くんと仲良いんだね〜」と……こいつら四月の初めにも「大久保くんと仲良いんだね〜」って言ってた気がするぞ。まったく、女子は怖いぜ。

「大井くんさ、前、大久保くんコンパに呼んでくれるって言ってたよね」
「呼んだじゃん、ちゃんと」

 そうだ、俺はきちんと役目は果たしたぞ。確か四月下旬の文学部哲学科みんな仲良くしようねコンパの二次会に、コースケを呼んでやったじゃないか。コースケは数少ない女子の歓迎を受け、俺は大多数の男子に「お前を精神世界から抹殺したい」と罵られた。苦い思い出だ。

「哲学科なんて女子八人でしょー! うちらは学部コンパの方に呼べって言ったの」
「女子はほとんど英文と日文なの。わかってるよね」
「そ、そうデスネ」
「だから今度、大久保くんと小山田くん呼びなさいよ」
「えええ……コースケはともかく、俺、小山田くんとは昨日知り合ったばっかりなんだけどナ」
「いいから呼べっての」

 ああ本当、女って怖い。



 その後、強制的に「今度の文学部コンパ二次会には大久保くんと小山田くんを呼びます」と誓約書を書かされてから、俺はやっと女子の輪から解放された。運命の恋人を待っているらしい小山田が、ホイホイと他学部のコンパに来てくれるのかは大いに疑問だが、まぁその時はその時だ。


[次へ#]
[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!