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据え膳 ♀



ふわり、と優しくベッドへ押し倒し、そのままかぶさるような体勢でレイに向き合う。

心臓がバクバク鳴ってて、顔が熱い。きっと、いや絶対赤くなってる…


そんな俺とは対照的に、レイは涼しげな顔でじっと俺を見つめている



……押し倒しといてアレだけど、レイの気持ちもわからないままに…、
というか押し倒されてるのに顔色ひとつ変えないレイって今の状況をどう思ってんだろ?とかすかな疑問も浮かび、
自分の気持ちを押しつけるのは躊躇われた。

「あ〜…や、やっぱりこういうのは…、ちゃんと好きな人と、さあ…」

……、いや、ほんっとうにここまできといてアレだけど、俺の理性を総動員させてレイから距離をとった。



「シンは嫌なのか?」
下からの声に思わず身体が跳ねる
嫌なのかって……



嫌なわけがないだろ!!

ぐぐっと拳を握り心中で思いっきり主張したけど表に出さない俺。大人になった。


「シンがしたくないと言うのなら私は何も言わない。」

「………」
「………」




「…したいかしたくないかで言えばしたいけど…」

くそっ情けない。結局は本音がポロリ。や、だって言っとかないと後悔するかもしんないし!


「ならすればいい。」

「すればいいってなぁ…。これは、その…、2人でするものであって…」
なんともドライな反応しか返さないレイに逆に言ってるこっちが恥ずかしくなるようなことを言わされた。
そう、言わされてんだよこれは!!
じゃなきゃ俺はこんなこと口にしない!



「当たり前だ。1人でしろなんて言ってない。」

「わー!!レイはそんなことを言うな!!」
1人でするだとかしないだとか…レイが言うと興奮してしま…、ゴホン、しないこともない!


「………結局どうしたいんだ。」

うっ、早く結論を出せということか…
ってかこれじゃあ俺ばっか恥ずかしいじゃん。

「……レイはさ、嫌じゃないの?」
「私か?」
「そーだよ。レイはどうなんだ。」

あ、やっぱりしたくないとか言われたらどうしよう。

でもなんとも思ってないからやってもいーよとかなってもそれはそれでショックだ。


「………」
「………」
流れる沈黙、思案するレイ。あぁ、据え膳食わぬはなんとやら。さっさと襲ってしまうべきだったか…


そんな邪な考えが頭をよぎったとき、レイが顔をあげた。
「シン、」
「うぁ、はい。」

タイミングがタイミングなだけに心の声を聞かれたかと思ったぞ。

「…私はシンが好きだ。」
「えっ、」

「だが、」
「あぁ、だが…ね、」

やっぱえっちはダメか…



「この好意が恋愛の対象となるものかわからない。」

「………」

「…ルナマリアやメイリンへの好意とは違う。それは、なんとなくわかるんだ。
……それに、ただの友人という括りにも、入らない気がする…。」


レイが紡ぎだした言葉は意外も意外、想定外な言葉だった。
よくて気の合う友人程度かと思っていた俺の考えを大きく裏切った。
友人の括りに入らない?友達以上ってこと?

「だから、よくわからない。」
「……うん。」
また強く打ち出した心臓の音が頭まで響いてくるのをボーッと聞きながら、返事になっているのかいないのか、そう返すのが精一杯だ。

え、もしかして友達以上?

そう決まったわけじゃないけど…、今なら翔べる気がする…。





「だからキスしてみてくれ。」



「うんんんぇえ!?」
変な声が…

「気持ちを確かめるんだ。シン、来い。」
「来いって、おまっ、」

マジなのか!?
いや、待て待て

「た、確かめんのにキスが必要なのかよ!」

「あぁ。キスは好きな人としかできないだろ」

おいおい、えっちは好きじゃなくてもできんのかよ


と、頭の隅の方で浮かんだ当たり前な疑問はパニック状態な俺が言葉にすることはなく、さらに「お前が来ないなら私が行く。」と大胆にも馬乗りになるレイに、恥じらいというものはないのか!!と思うも口をパクパクさせるだけでやはり声が出ない。


近づくレイの顔。心臓はバクバクと飛び出てしまいそうなほど鳴っている。いや、コレは飛び出るかもしんないぞ…
と、生命の危機を感じたとき、レイがピタリと止まった。

「………レイ、?」

出来ればこの至近距離で止まるのは…、ひと思いにやってくれ。の意を込めて名前を呼んでみたらとんでもないカウンターを食らった。

「……すまない、その…恥ずかしいものだな。」

頬を赤く染めて目を伏せるなんて…
えっ、さっきの勢いは?


――俺ってさぁ、ギャップに弱いんだよなぁ〜――

と力説するヨウランの声が蘇り、(うん。わかる。今ならすごく。)と心の中で返しておく。




…据え膳食わぬは男の恥。

シン・アスカ、いきます!!








あきゅろす。
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