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いつでも一緒




「レーイー、朝だぞー、起きろー。」

 無反応。はぁ、とため息を吐いて、もう一度間延びしたやる気のない声で一応、呼び掛ける。
 どうしてこうもやる気がないのかといえば簡単な話。自分でセットしてるくせに起きた試しがないのだ。この持ち主は。こうして無反応のはまだいい方。あまりにしつこい(オレだってしつこくしたくてしてるわけじゃない。)オレに実力行使がごとく強制終了。つまりは電源切られて放なんてざらにある。しかしレイには目覚まし時計という味方がいて、オレがどんなに呼び掛けてもうんともすんともいわず、果てには逆切れかますくせに目覚まし時計が鳴ったとたん素直に、とは言い難いがのろのろと手を伸ばして音を止め、むくりと起き上がるのだ。己の存在意義にはてと首を傾げたくなる。
 が、そんな暴君もオレの前に正座でもせんかぎりの殊勝さで待ち望むものがある。
 それはある人物からの着信だ。
 その着信は真っ昼間だったり夕方だったり、夜だったり真夜中だったり、とにかく突然で遠慮のかけらもない。とはいえ、流石に真夜中の時は相手もはたと気づいて申し訳なさそうにしていたけれど。それでもレイは、気にしないでください。まだ起きていましたからと嘘をつく。まったく、オレにとってはおっかなびっくりの持ち主の豹変ぶりである。

 と、そんな思考の折に慣れた電波を受信する。
「…メール。ギルから。」

 がばりっ

 まさに漫画ならその擬音がつくであろう。レイは起き上がった。

「メール?珍しい…」

 確かに、彼がメールを寄越すのは珍しいが、文面を見るとこちらが朝であることを見越してのメールらしい。そして肝心の用件は、『次の帰国が延期になってしまったよ(>_<)』というあまりに似合わない顔文字付きの報告だった。毎回メールの時に思うが、あの人は一体どんな顔でこの顔文字を付けているのだろうか。
 しかしレイはそんな顔文字に一笑もくれず、朝から陰鬱な溜め息を吐き出し、残念です。お仕事頑張ってください。とだけ打ち返し、ベッドに戻ってしまった。

「…なぁ、起きないと遅刻するぞ?」
「………。」
「ふて寝かよ。」
「だって、半年ぶりだったんだ。」

 ぼそりと聞こえたのはレイらしくない、ちょっと拗ねた声だった。
 こういう子供っぽいとこを見せるのはギルバート絡みしかない。レイはとてもギルバートを慕っていて、それは親愛か恋愛か、オレにはとても判別しかねる。人間の心ってのは最新鋭技術にだって捉えることは不可能なんだ。それが悔しい。いくら頑張ったところでオレはレイの全部は分からなくて、そしてギルバートの代わりにだってなれやしない。

「シン、今日は自主休講だ。」
「…はいはい。」

 枕にうずめた顔を少し横に向けて、不遜な顔をのぞかせた。その顔に「ギルはだめんなったけど、オレがいるから我慢しろよ、」なんて冗談半分、言ってみたら、役不足だって笑われたけど、きゅっと掴まれた手のぬくもりが、甘え下手なレイがオレを頼ってるのを伝える。ほんとに素直じゃない。


 でも、こんな風に拗ねてふて寝したり、落ち込んだり、喜んだり、レイのほんとの姿を知ってるのはオレだけだ。だから一緒にふて寝してやったり、慰めてやったり一緒に笑ったりするのもオレだけなんだ。

 ほんとはわがままで素直じゃない寂しがり屋な暴君。オレがちゃんとついててやんなきゃな。













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