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この熱は風邪のせい? ♀P


あぁ、風邪を引いたかもしれない。身体が熱くて頭がぼーっとする。それでいて心臓は早鐘を打っていて…、もしかしたらただの風邪ではないかもしれない…




ピピピ、と電子音が鳴った。体温計を抜き取って見ると、36.8とデジタル表示されていた。

「熱はないみたいだな。」

「そうですね…」
こんなにも熱くて、フラフラするのに。

「朝から辛かったのか?」

「いえ…。突然。」

「………」
アスカ先生がスッと目を細めて私を見た。サボりの口実じゃないのか、と思われているのだろうか。
でも、…ああ、また身体が熱くなってきた。



「顔、赤いな。…熱いのか?」

「…は、い」


先生の右手が前髪を掻き分けて額に触れる。
体温の低かった先生の手は冷たくて気持ちいいのに、その冷たさに反比例するように私の体温は上昇して、頭はクラクラで心臓は依然、太鼓を打つように激しく鳴っている。
背もたれのない丸イスから、座りながらにしてバランスを崩して後ろへ倒れそうになった私をアスカ先生は慌てて肩を掴むことで阻止した。



「ほんとに辛そうだな。とりあえず次の授業は休んで、それでも辛いようなら早退、だな」

「はい…」






クーラーの効いた保健室は快適だという理由でルナマリアなんかはよく訪れているらしいが、私はここの世話になるのは初めてだ。思っていたよりも軽い布団に、制服のまま寝転がる違和感。授業開始のチャイムがどこか遠くでなっているような、そんな静けさに目を閉じた。


するとすぐにポケットに入れていた携帯が振動した。見るとルナマリアからの短いメール。

『どうしたの?』

それに「気分が悪くなって保健室にいる」と返す。
しかしこう横になってみると先ほどまでの熱や動悸はあっというまに落ち着いていることに気が付いた。本当にわけのわからない熱だ。これなら今から授業に戻ったほうがいいかもしれない。

「こら、携帯いじってないでちゃんと寝てなさい」

カーテンの開く音と同時に氷枕を片手に持った先生が顔をだした。


驚きで心臓が高く鳴る。けれど治まる気配はなく、また熱が上がったような気がする。

……さっきと同じだ。



治まったようなので授業に出ます。の言葉は呑み込んで代わりにすみません、と言って布団をかぶる。

「氷枕いれるから頭あげて」

「あ、はい…」

ひんやりと冷たい枕に頭をあずけたところで、ようやく、やっと、心音が落ち着いてきたような気がする。

けど、
「………。先生、」
「ん?」
「まだ、何か?」

横に立ったままの先生に問い掛ければ、んー、と返事にならない相づちを打って、なにやら神妙な顔で先生は再び私の額に手を置いた。


とたんに身体中の熱が頭に集中して、くらくらして、先生の瞳に映る自分はなんとも情けなくも間の抜けた顔で真っ赤になっている
(先生の紅い瞳に映っているからだと思いたいが。それだけではなさそうだ。)



先生の手が額を滑って頬へとかかったときには何も考えられなくなった。
治まりかけた心音はしつこくもまた鳴りだす。







「バレルは可愛いな、」
それはそれは眩しい笑顔で言ってのけた先生は、ゆっくり休めよ。と言葉を残してカーテンの向こうへ消えた。


(な、んだ…突然…)
見目の良さは、それなりに自覚が、ある。
街ではよく声をかけられるし、学校でも今どき古風なラブレターなんかがこれまた古風にもくつ箱に、なんてこともあるし呼び出されること…まぁ所謂告白、なんかしょっちゅうだ。


煩わしかった。

この顔で得したことなど覚えがない。話したことのない相手が好きだ、付き合ってくれと言うのは理解し難いし、理解しようとも思わない。結局は見た目だけだろ。そんな好きは願い下げだ。


なのに、



可愛いってなんですか、先生。
なんでこんなに嬉しいんだ、私。

今、こんな顔に生んだ両親にとてつもなく礼が言いたくなってしまったじゃないですか!





end



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アスカ先生はもちろんバレルさんの顔が可愛いからでなくて、(や、もちろん可愛いけど)いちいち真っ赤になっちゃうのとか可愛いな、って思ったんです。
枕もってったあたりからバレルさんの気持ちに気付きました。(しかしバレルさんは自分の気持ちに気付いていないという少女漫画マジック)



Title by:ひよこ屋










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