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自暴自棄な認知



どすっと腹に鈍い痛みを感じて堪らずその場に蹲る。

「っ、なにすんだよ!!」
「それはこちらのセリフだ」

なにすんだよ、なんて言ったけど、これは多いに予想の範囲内。むしろもっと大変なことになるんじゃないかと思っていたぐらいだ。

セリフこそ落ち着いているようだがいつもより語気が荒いレイに、珍しいもん見たな、とのんきに考えてるのと、レイが動揺したということに僅かな優越感を感じるのは、この場には不釣り合いな気がした。

「ただの事故だと言うのなら…、」
「そんなわけないだろ?」
レイの言葉を遮って言う。レイが方眉をあげ、こちらを睨んだ。
「事故キスだと思った?でもわざわざ人気のないとこ連れてきて壁に押さえ付けたりする?」
レイは一瞬眉をしかめ、諦めたように息を吐いて壁にもたれかかった。
口元をこれでもかというほど目の前で拭ってくれるオプション付きで。

「だったら何故」
「キス、したかったから?」
答えになっちゃいない、とばかりに鋭く睨み付けられる。
けど、自分だってこの気持ちは持て余していたんだ。
正直、マジでキスできちゃうとは思わなかった。どう間違ってもレイは男だし、ただの興味本位ならやっぱり気持ち悪いー!ってなると思ったし。(レイには失礼だけどさ!!)
一時の気の迷いってことで片付くと思ってたんだ。

「俺は男だ。」
「…わかってるよ」
うなだれる俺にレイは何か言い掛けてやめた。中途半端に開かれた唇をまた閉じるのを見て、また口付けたくなって、頭を抱えたくなった。

わかってるのに…
「くそっ」
立ち上がり、レイの前に立つと僅かにレイは構えた。


「…ありえない。」
「何がだ。」
「全然かわいくないのに」
「当たり前だ。」
「俺、女の子じゃなきゃダメだ。でもって身長は俺より低くて、美人か可愛いかだと可愛い系の子がいい。」
「一つも当てはまらないと思うが。」
まず性別が違う。と落ち着いた答えが返ってくる。

「…うん。そのはず…。そのはずだ。」

そんな好きなタイプと、目の前にいるレイは、全然、全くも全く、正反対なのに…

(なんでもっかいキスしたいとか思うかな…!)


「何故俺が睨まれないといけないんだ」
ため息とともに肩を落としてぼやいたレイ。床に向けられた視線とそれによって僅かに伏せられた瞳。影をつくる睫毛が長いだとか、少し拗ねたように尖る唇が可愛いとか、さらさらと流れる髪に触れたいとか、……自然と高鳴る胸が忌々しい。


(ああ、くそっ)
もうただの興味本位だとか一時の気の迷いとかでは済まないくらいに、…大好きかもしれない!






title by:Fascinating








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