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時に凶暴なのは仕様です♀

時間軸とか気にしない方向で。(♀化だし、パラレルで、お願いします)




「ほら、履きなさいよ」
ぐっとレイの眼前に押し出されたのはプリーツのはいった短いスカート。

「…い、嫌だ…」
既に背後には壁しかない。逃げることができずただひたすらに顔を背け続ける。

「嫌だじゃないわよ!約束したでしょ!?」
「してな…」
「したのよ!」

着てみない?着てみたいでしょ?着てみたいのよね!着なさい!

そんな一方的な約束、あるんだろうか。


「わざわざ発注したのよ?レイのために!」
ために!の部分を強調して言われて少し焦る。
他人の好意に弱いレイは(たとえそれが迷惑であっても)それを無下にはできない。

「レイがシンを落とすって言うからあたしは協力しようと…」
「そっ、そんなこと言ってない!」
「いつまで経ってもなんにもしないから!」

うっ、と詰まる。
「べ、別に私はシンのことは…」
「へーぇ、ふぅん、そう。………じゃあ、あたし本気でシン狙ってみようかしら」
「!!?」
「なんやかんやでシンって赤服だし、顔もいいし。」

「……ルナマリアは、興味がないと…」
「前はね。…仲良くなってみたら結構いいかなって思ってたのよね。」

「………あ、でも…」
「なによ」

「……その……」


泣きそうな顔になるレイにルナは抱き締めたい衝動を抑える。


ことはできず。


「うそだよー!!」
もう、そんな可愛い顔しちゃって、襲うわよ!!

「う、うそ?」
「うそうそ!あんたの王子様取りゃしないわよ!」

王子様、シンが王子様…
爽やかな笑顔を浮かべるシンを想像して顔が火照る。
「ち、違っ!」

「まぁ確かに王子様はないわね。」
「あ………、うん…。」
勢いで言っただけで、王子様というところを否定したわけじゃなかったけど…。
すっぱりと切り捨てられてしまい、ちょっと複雑なレイ。


「とーにーかーく!!コレ履いて悩殺ポーズでシンを落とすのよ!!あたしはいいとして、シンって人気あるから。」
悩殺ポーズってなんだ、とは思ったがそれよりも気になることが。
「……シンはモテるのか?」
「…まぁ、出世株だし。顔もいいし。…あー、なんかお姉様方に結構人気らしいわよ」
実にあっけらかんと言い放たれたルナマリアの言葉に暫し呆然とする。

モテる…?シンは、モテるのか…


「アカデミーではちょっと敬遠されがちだったけど、…お姉様方にはむしろそれぐらい刺のあるかんじが可愛いのかしらね。」

「……かわ、いい…」
しかもシンは年上にモテるとは…

「シンってそーゆーの、興味なさげだけど、…あれで寂しがりだもんね、大人のお姉様に優しくされて…」

「や、優しくされて…?」

「案外簡単に落ちちゃうかもね」



落ちちゃうかもね、落ちちゃうね、落ちゃう…、落ちる…!




「………」
表情を曇らせたレイにルナマリアははぁーあ、と大げさな溜息を吐く。
「もうっ、シンの隣は私よ!ってくらい強気んなんなさい!」
はい、コレ!話が当初の目的からずれちゃったけど、とりあえず履きなさい!と手渡されたスカート。

手に持ったそれはやはり短い。

(こんなもの履いたぐらいでどうにかなるなんて思えない。)
けど履いてみるのはルナマリアがしつこいから。
仕方なく、履くんだ。
別にお姉様方への対抗心とか全くない。そんなわけ…ない。
嫌そうな顔を装いつつもしっかりスカートを手に更衣室へ入っていくレイ。

思いがけないライバルの多さに焦りを隠せないレイの様子にルナマリアは腹を抱えて笑い出したいのを必死で堪えていた。






「短い…!」
ルナマリアに言われて履いてみたはいいがなんだこの短さは!
「そう?あたしと変わんないわよ?」

「……下着が見える」
「どれどれ」
「!!?」
ぴらり、とスカートを捲り上げられ、突然のことに反応できないでいるレイに
「白、さっすがレイ。期待を裏切らないわね…」
妙に感心してみせるルナマリア。

「なっ、なにすっ…」
漸くルナマリアの暴挙に反応らしい反応をみせ、慌ててスカートの裾を押さえるレイにごめんごめーん、と軽く謝る
「あたしはちゃんと下に履いてんだけどねー」
自分のスカートを捲って下に履いたショートパンツを見せる。
「あんたの分、すっかり忘れてたわ」


「なっ、おかしいだろう!私だけこんな…」
「だから謝ってるじゃなーい」
「……っ、脱ぐ!」
「あー、ストップストップ!脱いじゃだめ!」
「はっ、離せ!」
「シンのとこ、行くんだからね〜」
ぐぐぐっと力は均衡する。…が、体力で勝るルナマリアに分があった。

そのままずるずると引かれ続け、その光景はとにかく人目を引き、終には王子様(仮)の目も引いた。



「何やってんだよ」
「シン!やっと見つけた!」
同期の2人が異様な注目を浴びていることに呆れながらも声を掛ければ、目的は自分だったようで、声を掛けたことを若干悔やんだ王子s…
あまり面倒事に巻き込まないでほしいという思いがありありと浮かんでいる。


「みてみて!かーわいいでショ!」
ルナマリアに隠れるようにして立っていたレイは、前に押し出されたことに軽く舌打ちをしたが、それからは見事なポーカーフェイス。

先ほどまでの可愛らしい焦った顔やら抵抗やらは見る影もない。


(シンの前ではクールぶっちゃうんだから〜!もちょっとぶりっこしなさい!)
…まぁ、ぶりっこされてもそれはそれでむかつくけど。



「へぇ、レイもスカート履いたりするんだ。」
おっ、いいかんじに食い付いた。ルナマリアはにやりと笑みを浮かべ、レイを見やる。

相変わらずのポーカーフェイス。

(崩してやるわ!)


「ね、似合うわよね!?」
「あ?あぁ、うん。」
ルナマリアの勢いに気圧され気味に返したシンの言葉にレイが少し、ほんとにすこーーし肩を揺らしたのをルナマリアは見逃さなかった。


「でしょー、可愛いわよねぇ?」
「あー?…うん、まぁ…」
「か わ い い、よね?」

「っ可愛い可愛い!」
しつこいルナマリアに若干キレ気味に返したシ…王子様。それと同時にレイがよろけてゴンッと壁と頭をぶつけた。

「お、おい、どうしたんだよ。」
「な、なんでもない…」
可愛いと言われて動揺したとは口が裂けても言えない。

「なんか顔赤くない?熱でもあるんじゃ…」
「ない。なにもない。問題ない。」
「あらぁ?ほんとに大丈夫?医務室行く?あっ、でもあたし用事があったんだ、シン、レイのこと頼んだわね!」
すかさずルナマリアのかますいらぬ援護射撃。レイは先手を打たれたことに悔しげに唇を噛む。シンの後ろでなんとも意地汚い笑みを浮かべながら手を振るルナマリアに軽く殺意が沸いた。

「えっ、あっ、おい!」
さっさととんずらこいたルナマリアに、なんだぁ?あいつ、と首を傾げながらもそれほど気にしていないようで、
「医務室行く?」
「大丈夫だ。」

「大丈夫…ったって、お前顔真っ赤だぞ?」
「!!?」
なんの予告も無しに額に触れてきたシンの手。
付き合いは長いが直接肌に触れたりは実は初めてだったりする。嬉し恥ずかしで頭は大混乱である。

「おぶってこーか?」
「おっ、おぶ!?」
「あー、でも…」
スカートだしなぁ、と頭を掻くシンが何をしようというのか、いち早く察したレイはついつい伸ばされたシンの腕を関節と逆方向へ捻ってしまった。恋する乙女は時に凶暴である。

「いでででっ!!」
「大丈夫だ問題ないっ気にするな私は気にしない――!!」

「れ、れい…??」
いつもクールなレイがここまで狼狽することに戸惑い、文句すら言えず、

そのまま走り去ってしまったレイをただ見送り、
はためくスカートから覗き見えた色にドキドキしてしまう、シンなのでしたー。

(白………)





終わり



シンがおぶるのを諦めてやろうとしたのは姫抱っこです。
そういうハズいことを時と場合によっちゃ軽くこなせるかっこいいシンを目指しました。あまりかっこいいとこ見せられんかったけど。




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