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貴方の隣じゃ読書もまともにできないよ



ち、ち、ち、と音を刻む時計。
足音。少しの話し声。何かを書く音。
本をめくる音。それ以外は自然の音がするだけ。煩い馬鹿笑いなど一切ないその空間。



ぱらり、と項をめくる。
涼宮さんが読書の秋にはまったらしい。
部活で読書なんて長門さんのようだ、と思いながらまためくる。
だが、それと同時に嬉しくも思った。
涼宮さん、長門さん、朝比奈さんは町の図書館へ。キョン君はというと億劫だからと学校の図書館に止まり、僕もまたここにいる。



ふと、横を見ると可愛らしい横顔。
瞳が動き、文字列をたどっていく。
少し目線を下に下げれば誘っているように薄く開いた唇。
それを見た瞬間、耐え難い衝動に駆られた。



駄目だ。
そう思ったがもう遅い。
気づいた時にはキョン君の腕を掴んでいた。


「何だ?」
「………」


急に腕を引っ張られ、本棚の影に連れて行かれた。
古泉からの視線を浴びている時から嫌な予感はしていたが、眉間に皺を寄せて唸っている姿は…何というか…気持ち悪いから声をかけるのは止めた。



「こ、古泉っ…」



首元に口付けられ、思わず声を上げた瞬間、唇を塞がれる。



「…ん…っ…」



深い口づけ。
あまりに突然なことで、開いた歯列の間から舌先をねじ込まれ、口内を好き勝手に犯される。
体に力が入らない。苦しい。
息ができなくて、飲みきれなかったどちらのものかわからない唾液が顎を伝う。
膝から力が抜け、がくりと落ちた。
それを支え、漸く口を離した古泉は顎を伝うそれを舐め、何時もとは全く違う切羽詰まった顔をしていた。
だが、それを隠すように困ったような笑みを浮かべる。



「貴方の隣じゃ読書もまともにできませんよ」



溜め息混じりに耳に響く低い声。
その声に心の中で一つ大きな溜め息を吐き、毒づいた。



それはこっちの台詞だ。
お前の隣じゃ読書もまともにできるわけがない。





―終幕―





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あきゅろす。
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