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TOW3別設定・07




ずっと、考えていたことがある。
生きると言う意味。
生きると言う、そのこと。
答えが出ないその問いに、ずっと悩んで、考えていて。
けれどそれと同時に、もう1つ、違う疑問。

俺は、一体何を残せたのだろうか。


見上げればそこに広がる、青空を残してくれたのだと誰かが言った。
けれどこの青空は一万の命がなければ取り戻すことも残すことも出来なかったし、俺1人で残したものとは絶対違う。

みんなの幸せを、願っていた。

溶けていく瞬間まで、ずっと。
そして何か残せれたのかとも、ずっと。
この体は全て消えてなくなってしまう理だから、きっと、ずっと、何かを残すことに憧れていたんだと思う。
記憶を残して消える定めなのだとは知っていた。
でも、残したいのはそういうことじゃない。

俺は何か残せたのかな?
形で在ったとして確かめる術はもう持っていないのだけど、世界の理が変化して、生活が変わって、みんなが幸せに暮らしているその中に俺はいないけど、どうか、無意味ではなかったのだと。

ただ消えるだけの道ではなかったのだと、どうか−−−



『ルーク』


触れて、浮かび上がった文字に涙が溢れたのは、ずっとそんなことばかり考えていたせいだった。
その文字がここに在ること。
自分に、向けられていること。
嬉しくて嬉しくて、これが例えば喜びだとか、ああ、どんな名を付ければ良いのか分からないぐらい、あたたかな気持ちでいっぱいになって仕方なかった。

彼らの先を、俺は知らない。
でも、無意味ではなかったことを知った。
ようやく、知ることが出来た。
約束は果たせれなかったけれど、これで、いい。


世界が続いてくれたのなら、それで、いい。




* * *



怒髪天を衝く、とまではいかないものの、そこそこなレベルにまで怒っていたフレンの説教に三時間は余裕で過ぎ、とっぷり日の暮れたがっつり夜な現状に、今日は改めて話しに行くにしてももう無理だな、と判断したことの、一体何の間違いがあったと言うのだろうか。
翌日になってあのお坊ちゃんの姿を探しにロビーを通過しようとすれば、そこでまさかのディセンダー一行としてコンフェイト大森林に行ったとアンジュの言葉が聞こえ、ユーリは軽くどころかがっつり目眩を覚えたのだが、まあ今更どうしようもないことだった。
「止めたのだけどね…」と呟くように言ったアンジュの目は死んでおり、ギルドを束ねるリーダーですらそんな風にさせるあのディセンダーにツッコミ所は多々とあれど、行ってしまったものはもうどうすることも出来やしない。
その場に居合わせたのは何もアンジュだけでなく、別口のクエストを引き受けに来たクラトス、リフィル、ロイド、ジーニアスも居たそうだったが、速攻で止めた4人を責める気には誰もなれる筈がなかった。
今日も今日とて、難易度マニアで突っ込んだらしい。
一回あいつも説教喰らえよマジで。


「数日前から本格的にターザンごっこしたいって言ってたのは警戒してたんだけど…」
「ああ、その話なら俺も聞いたな…マジだとは思いたくなかったが」
「ブラッサムの腕を引き千切って来るみたい」
「……流石にそれは強制的にでも止めた方が良かったんじゃないか?」


普通に蔓でも採って来るならまだしも、まさかの一歩間違えずともグロテスク間違いなしな内容に、思わずユーリも顔をしかめて言ったのだが、困ったように笑んでアンジュは言った。


「大丈夫よ、キールくんが一緒だから」


えげつない代表、シューティングスター連発キールくん。
セネルと交代制でメンバーに加わるユーリも、あの容赦ない術の嵐は知っており、身に染みているからこそ、これは確かにブラッサムもキールが居るなら塵と化すのだろうなぁ、とは思った。
と言うかそもそも肝心のディセンダー自身が職業ビショップでタイダルウェイブ連発かエクスプロードで敵を一撃撃破するのが趣味だと言うのに、ブラッサムの腕をお持ち帰りなど不可能な話だろう。
大体、その話を聞いたキールがセネルとルークがトドメを刺すような状況にする筈がない。


「……またメンタルバングルが貰えないって喚くパターンだな、これは」
「あと適応レベルが高過ぎて誰も装備出来ないアイテムを売り捌く感じかな?アリィ自身もまだレベルはそんなに高くないみたいだし…」


ちなみにディセンダーのレベルはこの前ようやく69になったばかりである。
セネルとルークはそれぞれ81と79で、キールは75。
もっと早くにキールさんの魅力に気付けば良かったと一時期ひたすらぼやいていたが、ジーニアス、ソフィ、カイルの3人が仲良く揃って80な現状にはちょっと文句を言ってやりたかったりもした。
ギルド内でレベルが一番高いのはエステルで85なのはもう何も言うまい。
元はキールがエステルの交代要員だっからなぁ…なんて考えといて何だが、はっきり言おう。現実逃避して何が悪い。


「夜には帰って来てくれると良いのだけどね…」


どこか疲れ切ったように言ったアンジュの言葉に、肩を竦めて立ち去ることぐらいしかユーリには出来なかったのだが、とにもかくにも今日はもう無理だと判断したと言うのに、思いも寄らないことが1つ起きた。
それはとっぷりと日が暮れた後の、夜の話。
風呂上がりにシャーベットでも、とまずは作りに行こうとしたその時に会ったのは、部屋を追い出されたと怒るチェルシーと無表情のまま歩いていたリオンだった。



* * *



「もー!本当にルーク様は我が儘過ぎます!ウッドロウ様もどうして何も仰らないのか、私には分かりません!!」


プンプン怒るどころか今にも周りに(物理的な意味合いで)当たり散らしそうなチェルシーに、一緒に部屋を追い出されたらしいリオンが数歩分後ろに下がって呆れたような目をしていた何とも言えない場面に、ユーリはちょっと本気で何故こんな時に限って居合わせてしまうのだろうか、と途方に暮れたい気分だった。
口を尖らせて怒っているチェルシーの姿に、あのお坊ちゃんはまた何を言ってここまで彼女の神経を逆撫でしたのだろうか、と考えれば考えるだけ頭が痛くもなって来たが、チャット達とお茶をしに行ったその後ろ姿に追求する気にはなれず、とりあえず食堂への道を譲ることにする。
周りが見えない程らしくなく腹を立てているのか、見るからに不機嫌過ぎるチェルシーを見送れば、後ろに居たリオンもちょうど通過するところだった。
「お前も食堂に行くのか?」と言う質問はしない。
部屋を追い出されようとそうでなかろうと、リオンはこのぐらいの時間になると大抵プリンなどと言った甘い物を食べに食堂へ足を運ぶことを、ユーリも知っていたからだ。


「アリィに連れられてブラッサム倒しに行ってたって聞いてたが、あのお坊ちゃん帰ってたみたいだな」


一体いつ召集が掛かるのか厭すぎるブラッサム狩りの話に、碌な目に合わないと知っているからこそリオンも顔をしかめたのだが、それでもどうにか溜め息だけは堪えて、振り返らず答えた。


「キールさんがエクスプロードでブラッサムを消し炭にしたんです、と言ってディセンダーは喚いていたがな。…あいつの方は、ウッドロウが連れて来た」
「ウッドロウが?」
「話があるらしい。僕もよくは知らない」


それが本当ならチェルシーがああも怒るのはおかしくないか?とユーリは思ったのだが、ルークならば前後の脈絡打った斬ってお構い無しに周りを不愉快にさせるような気もしないこともなかったので、何とも言えない話だった。
真っ直ぐに食堂へと向かったリオンの背を見送って、ついつい、足が向かう先は迷いもなくその一室で、これにはもう苦く笑うしかないだろう。
誰かに見られたら咎められる行為だとは分かっていたが、ちらつくのは昨日見たあの朱色の顔で、放って置くことの方が出来なかった。
盗み聞きは過失だとそんな言葉が頭に過ぎったが、今更だと気にも止めず、微かに聞こえる話し声に耳を澄ませる。
珍しく焦りを含んだようなウッドロウの声が聞こえたが、そんなことよりもその話の内容に、頭の中なんて簡単に真っ白になった。



「−−−どうか考え直してくれないか、ルーク君。このままでは、君は殺されることになるのだよ?」



聞き耳を立てたことに後悔はしないけれど、なあ、ちょっと急過ぎるんじゃないか?こんな展開は。



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チェルシーもウッドロウもキャラ掴めてないので盛大にあやふやです。
ぶっちゃけずともリオンもです。申し訳ないです…orz





あきゅろす。
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