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オマケ


昨日の激しい情交の後、俺とレイの関係は少しだけ変わった。

相変わらずレイはデロデロに俺を溺愛しているし、俺があいつに暴言を吐くのは変わらない。
変化と言ってもちょっとした変化だ。

「レイ。」

俺は外界へと向かうレイの名を呼ぶ。
それを酷く特別な事のように、幸せそうに微笑むレイ。

「せいぜい死なねぇように頑張れよ。」

けっ。と悪態を付いてざまぁみろと俺が思っても、俺大好きフィルターを有するレイにかかれば、それは愛の言葉にしか感じないらしい。
外に向かっていた身体を翻し、俺を優しく抱き締める。
チュッと髪に一つ口付けると、行ってくるよ。と自信満々な笑みを讃えて光の先へと出て行った。

「本当、何やらしても様になりやがる。」

ぼそっと呟くと、隣からニュッとガルデが寄って来た。

「ちょっと〜、何その甘々雰囲気は。このガルデに細かく教えなさい。」

そうニヤニヤしながら近づいてくるガルデ。
はっきり言って勘弁して欲しい。

「何も変わってねぇよ。ガルデの目は節穴だな。」

そんな俺の言葉にも、ふふん。と鼻で笑うと、視力はあの湖までハッキリ見えるわよ。と光の先を指差すと事細かにそこに何があり、何をしているのか話し始めた。

俺には辛うじて水色が見えるだけで何がなんだかサッパリだ。

「ちょっ、ちょっと!もう良いよ。分かったから。」

口には笑みを讃え、延々と威圧的な目元で話すガルデに戦き、慌てて止めに入る。

「そっ?で?なんで急に獣王様を名前呼びしてるのかしら?」

にっこりと綺麗な笑みとは裏腹に、背景にはドス黒いオーラを感じさせるガルデの表情を見て、女は怖いと改めて思った。
クラスにも気の強い化粧の濃い女たちが居たが、あいつらもマジで怖かった。
集団で詰め寄ってはピーチクパーチク甲高い声で喚き、我を通そうとするのだ。
大人しい女の子が好きな俺からすればあいつらは女じゃねぇ。
だが、はっきり言って、その何人分よりも美人度も、迫力も上のガルデに詰め寄られ、俺は内心タジタジだった。
しかも、たかが名前の呼び方が変わったくらいで、気付く目敏さったらない。

ふと、そう思い、こっちに来てからを思い返す。
そう言えば、ガルデはあいつの事を獣王様か、王様としか呼んでいない。
他の奴はあった事ないが、一番身近な筈のガルデですら謙譲しているのだ。
おそらく、他はもっとへりくだっているのだろう。
そう思うと、やっぱりもう少し優しくしてやろうかと思ってくる。



俺が真剣に考え込んでいるというのに、そんな事はお構いなしに、ガルデは鼻と鼻とが触れ合う程の近さにまでやってきた。

「で?」

美人が俺に迫ってきている、と本来ならウハウハ物だが、この空気感、そしてガルデの目的も全て知っている俺はそれどころではない。
空気だけで脅してくるのか、この女マジでやるな。と、敵ながら尊敬すら抱いてしまった。
だが、ガルデにあいつのナイーブな心情を教えるのは、さすがに王としての面子が立たないだろうし、可哀想だ。
だからと言って、俺が受け入れた〜とか、ちょっと何か芽生え始めてるかも〜なんて言ったらきっと碌な事がないのは目に見えている。

「ちょっと〜!早く喋んなさいよ〜!」
痺れを切らしたガルデに揺さぶられながら、俺は口を開いた。




「…てわけ。あいつ500年以上生きてるんだろう。俺可哀想になっちゃってさ。」

そう言った俺に、ガルデはあんぐりと口を開いている。

シシシ。驚いてる驚いてる。これでガルデも納得するだろうと、自分の考えに内心万歳三唱をしていると、ガルデが思いもよらない事を言ってきた。

「てかさぁ、何その嘘。あり得ないわよ。」

ガルデの言葉に俺はなんでだよと、若干噛み付きながら問う。

「だって、私、獣王様の夜伽をした事あるもの。」

はて。ヨトギ…よとぎ?夜伽ったら寝る事だよな。
セックス込みで。何それ。ガルデは何を考えてそんな嘘言ってんだ。

「だから、ハジメが獣王様にヒモロギが無いと下手だの言ったときは驚いたのよね。私たちにヒモロギを使われるわけないじゃない?だけど毎回私たちは天国見ちゃったもの。あのフェロモンに逞しいお身体、あんな最高のモノをお持ちだなんて、さすが世界を統べる王だと思わない?あぁ〜…ハジメが羨ましいわ。」

そう、うっとりしながら話すガルデは嘘を付いているようには見えなかった。
というか、さっき私たちって言わなかったか。私たちって。

俺は沸々と良く分からない怒りが沸き上がるのを爪を肌に食い込ませ、白くなるまで握り締めながら顔を上げる。
引き攣った笑みをなんとか浮かべながら、ガルデに真相を確かめる。

「…でもさ、あいつって俺が来るまで子作りできなかったんじゃないっけ?」
はははと乾いた笑いを零しながら聞く。

「そりゃ子供は作れないけどさ、不能じゃないんだから性交はできるわよ。しかも神に選ばれし王様で最高の容姿よ。周りがほっとく筈ないわ。自分の容姿に自身のある娘なら誰だって獣王様と一夜だけでもと、伽を願うし、男でも抱かれに行った奴もいるわよ。」

「男も!?」

ガルデのびっくり発言に、思考が追いつかない。
いや、だからアイツあんなに慣れてたのか。
いやいや、でも…。

「でも、それももうおしまいね。獣王様は伴侶が現れた瞬間から伴侶以外を抱かれる事ないもの。」

フルフルと震えていた俺はなんでそんな事分かるんだよ。とガルデを睨む。

「だってそれが理だもの。歴代の獣王様だってそうだったのよ。伴侶が現れれば、それまでどんなに取っ替え引っ替えの節操なしでも急に身持ちが固くなるの。まぁ、今の獣王様の溺愛っぷりを見ていてそれが本当だと誰でも分かってるわ。だから、色仕掛けをするようなバカはいないから安心しなさい。」

ガルデの言葉に顔に血が集まる。

「やだ、ハジメったら真っ赤じゃない。本当、可愛いんだから。」

たった今、憧れの悩殺バディでハグされている事など全く気付かない。
俺の嫉妬を、自分が気付く前にガルデに見破られた。
嫉妬。嫉妬って恋しい奴にするアレか?
てか、ガルデにバレた?
やばい、恥ずかしさで頭がいっぱいだ。

だから、頭の上で零したガルデの言葉にも気付かないまま、熱い顔を隠すのに必死だった。

「こぉんなに柔らかくて華奢な色白美人なんてこの世界の誰も太刀打ち仕様がないじゃない。私が食べちゃいたいくらいよ。ふふふ。」
にんまりと紫紺の瞳を細め、猛獣が狩りをする表情を浮かべるガルデ。

ゾクッと悪寒が走り、ガルデを見上げると、そこにはいつものお茶目な表情があった。

「あら、震えて。風邪引いたら大変。今日はもう休みましょ。」

ガルデに促され、俺は寝具に横たわった。


帰ってきて心配で堪らないとに俺を見つめるレイに、イケメン滅べ〜。と叫んだのは許して欲しい。
俺は悪くない。うん。


オマケ END



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あきゅろす。
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