「…あなたが好き」 冷たい風が、打ち付けるように頬を打つ。 その4文字が頭にハッキリと浮かび上がった頃、俺はただぱちくりと瞬きをしていた。 あと5分で俺の学校に予鈴が鳴り響く予定なんだけど こう告白されては立ち止まらない訳にいかない。 手袋を忘れたせいで、両の手が死人状態だ。 「…」 一言も話さないその女子を横目で見て、溜め息をつく。 「…ふーん」 「…」 そいつは、しれっとした顔で視線を泳がせて、開こうとした口を閉じる。 「それで?」 「…」 目前の女子は定まらない視線のまま何も言わずに踵を返すと、 今まさに俺が向かおうとしていた方向に歩み始めた。 ノリが良いのはひらっと舞ったうちの制服のスカートのみで 本人は意を表せず俺を置いて歩いていく。 …めんどくせ。 スカスカの鞄を肩に掛け直し、完全なるスタートダッシュを決め込んで、 小さな背中にいざタックル。 「…何」 倒れそうになった細身を抱え直して、また無愛想な声を聞いた。 「お前俺とどうしたいんだよ」 「………」 ひゅうっと蹴りでも入れるみたいに風が世界を掻き回し、丈の短いスカートをひらりと揺らし、その黒髪をも踊らせる。 満足したように風が止んだ頃には 数回開け閉めを繰り返した唇は結ばれてしまっていた。 そろそろ教えてくれないか その紅い耳の意味を、さ 「おめでとう。お前等今日で連続遅刻2ヶ月突破だぞ」 「…………」 「…」 「そろそろ理由を教えてくれよ。ってか教えろ」 「………美島が中々ハッキリしねーのが悪いんだろ」 「…違う。宮地くんがしつこいだけ」 「ふざけんなてめー男にだって好きな奴に言って欲しい言葉くらいあんだよ。刺して良いか?」 「私を刺して泣くのはあなたでしょう」 「あーもー何その自信。ムカつくわー。殴って良い?」 「同じ事。私を殴って損するのは貴方」 「あーホンットムカつく、てかたった一言二言口にすりゃ済むんだからさっさと言えよこの頑固馬鹿。花火でもくくりつけて飛ばしてやろうか?」 「頑固なのは貴方。意味くらい判るでしょう。告白してその後どうするかなんてもうパターン化してるのだから」 「ばっか俺はそれを敢えてお前に言わせてぇんだよアホが」 「私達が未だどうする事も出来ないのは貴方のその拘りのせいでしょう」 「あー…何だ?お前等」 「青春なのか?」 「……………」 「…」 「…青ってより黄色だな」 「私もそう思う」 「だって何か」 「キラキラしてる」 「…お前等早く付き合っちまえよ、で、遅刻しないで仲良く登校してこい」 「……………」 「…」 「…おい美島」 「何」 「俺と付き合え」 「わかった」 「………………」 ―――――― 何がしたかったのか判んないけど とりあえずめんどくさい二人だ^^ . まえつぎ |