幼なじみがいた。 いわゆる美少女で(オツムは弱かった)、底抜けに明るい奴だった。小学校に行き帰りしていた俺等は、まだ餓鬼だと言うのにその周りに群がって色付いて。とんだマセ餓鬼だった訳。一方、アイツは色恋事は苦手で、おまけに酷く鈍く、誤魔化したり気付かなかったりしていたのだが。 俺はそいつと生まれた時から一緒に居た。家族も同然、兄弟だと思い違いできる程であった。噂が立った事もあったが、アイツはキョトン顔で「何言ってんの?」と言い退けた。 つまり、そう言う奴なのだ。 たとえ中学の途中で転校して暫く会っていなくても、あの性格は変わっていない。筈だ。早々変われるものじゃないと思うし。 久しぶりに会うのだから、とかそんな暇を与える事無くアイツは現れた。 長い黒髪に相変わらずな顔でニッコリ笑い、 「久しぶり、清彦」 と言う。 は?誰だ清彦。まさか間違えたんじゃねェだろうな、ぶって良いか?つかぶとう。 「あっれ違ったっけ?清春?清之?清雄?清隆?」 「清志だ馬鹿、蹴るぞ」 「久しぶり、清志」 三年ぶり?と首をかしげたそいつのデコにデコピンをした。幼なじみの名前忘れてんじゃねぇよ、蹴るぞ。あからさまに不機嫌な顔をしたら、「まあ気にすんな!」と肩を叩かれた。気にするっつの、こちとら会えない間だって…いや、何もないが。 「しっかしでっかくなったねー、あの頃はあたしのがおっきかったのに」 「当たり前だろうが馬鹿、相変わらずだな」 「ふっふっふ…」 「んだよ」 「そう言うと思って」 「そうって馬鹿って?」 「そうだよ」 「持ってきたのさ!」 「何だコレは」 「こないだの期末テストだ!」 「いや、何で持って来たんだ馬鹿」 「よく見てよ!」 「は?」 お前の痛々しい点数なんか見たって腹が痛くなるだけ…と言いかけて、口が止まった。得意気にふんぞりがえってニヤニヤしてるそいつから、その紙の束を奪い、抜け目無く見回す。こんな、こんな事があって良いわけ…まさか! 「カンニングしたのか!」 「しないよそんな事っ」 「…だってこんな…」 「ふふん」 「…全部80点以上なんて…」 「おまっホントにカンニ…」 「ちょっどんだけ馬鹿にしてんの」 「だってこんな…」 「頑張ったんだよー」 「………」 「二度見しないでよ」 歩けば転ぶ走れば滑る、字を書く事は出来るけど、文を書くのは儘ならない奴、じゃ無かったっけ?(※只の宮地の印象です) 「………で?何?これで何をしろと?これを餌にガリガリくんでも買わせようって?」 「……………ちっっっっっっちゃ!清志ちっちゃ!」 「んだよ、違ったら何だってんだ」 「私の80点はガリガリくんレベルか!」 「別に貶しちゃいないっての!」 ハッキリ言え!何を言いに来たんだ! むい、と鼻を摘まむと、あからさまに口をひん曲げて、呆れた瞳をされた。何だこいつ。 「親と約束してたの!」 「何を」 「〜〜〜清志のせっかち!」 「良いから言いやがれ。舌引っこ抜くぞ。」 「清志のエッチ!」 「ああ!?」 「スケッチワンタッチ!」 「良いから言え!」 「こっちに住むの」 「…………は?」 「清志の家に、住んで良いって約束してたの!」 「はああああ!?」 スタートイン! (良かったね清志!これからは毎日きゃっきゃうふふ出来るよ!)(きゃっ…!?)(え!意外と純粋!?)(う、うっせ!) ‐‐‐‐‐‐‐ 宮地ー!!!← 過去に中編にする予定があったりしたやつ← 20100624 まえ |