ちょっと嫌な事があった。って俯いて言うものだから、何かと思った。 「ざっけんなもー!リア充かくばくはくしろっ!」 「核爆発ね、核爆発」 バリンバリン音を立ててポテチを食べる俺の(アパートの)お隣さん、美島は俺の3つ下だ。つい3ヶ月前に越してきたのにまるで幼馴染みのような扱いである。ある意味素晴らしい。 「ちょっとウランちゃん持ってきてよ!ぶん投げちゃる!」 「ウランちゃん可哀想だからだーめ」 そして何とも気性の激しい子である。平均よりかは小さい体をしているだろう(最初歳を聞いたとき失礼ながら吃驚した)に、平均よりかよく喋る。過激な言葉をぽんぽんと。 まあ物理的な数値でいくと少し小さい位なんだろうけど、華奢な為に更に一回り小さく見える彼女の印象は、さしずめちょっとした恐竜になり得るかもしれない。 そんながっつり座らなきゃ小動物とかなんだけど。 でもきっと、それが長所なんだろうな。 「だってアレだぜ!?これ見よがしに見せつけてくるんだぜ!?」 「…て言うかリア充て何?」 「うえっ知らないの俊くん!?」 「う、うん」 驚かれた。すっげー驚かれた。俺がこの子の歳聞いたとき位に驚かれた。 「んー何て言うか…こう、ピカピカッでつるんって感じの奴等!」 「ごめん確認したいんだけどこれ温泉卵の話じゃないよね」 「うち温泉の硫黄ってまあ確かに臭いと思うけど別に嫌いじゃないよ」 「で、リア充って何?」 「んー…だからこう…パカーてなっててこう…ぷるん?て言う人種だよ!」 「もっと解んなくなったよ」 「だからあ、さ!具体的に言って彼氏持ちの事なの!」 へえ。初めて知った。元々疎い質な為、知らないのは無理無いんだ。だってそこまで情報とか要らなくない? あとこれ以外にも意味があるんだろうな。彼女が日頃から愛読している少年漫画らしいものが、彼女の右手によって旗のように揺れている。全く察しはつかないけど。 …あれ、ちょっと待てよ。 「、ハルカ、彼氏居ないの?」 「そりゃ居ないよー。だってこっち来てまだ3ヶ月だよ3ヶ月!出来ないっての」 ふてくされなさった。 「地元に居たりはしなかったの?」 「ないない!居てもうちじゃあ遠距離なんて無理だし!飽き性なんかじゃないんだけどねっ!」 「じゃあ彼氏なんか出来ないじゃん」 「スルーか。精一杯のツンデレぽい台詞はスルーか」 「解りにくい」 「伊月くんへのサービスだし!伊月くん鈍っ!ちょー鈍っ!こりゃハイジもびっくりだわー」 「べ、別に鈍くなんか…っ!て言うかワザワザツンデレてくれたって、う、嬉しくないんだからっ!」 「うわうま!俊ちゃんツンデレモドキうま!」 「どうでも良いけど呼び方定まらないなあ」 「良いじゃん。日々進化しようとする心の表れだよ」 うん、よく解んない。 「あーあ、どっかに素敵な出会いかウランちゃん落ちてないかなあー」 「とりあえず、その2沢を活用してる限りそのデンコちゃんやらウランちゃんやらから接触拒否される日は遠くないと思うよ」 それに見っかるよ、その辺でさ。 「…………つっこんでくれないから言うけどさ、うち遠距離した事あんだよ」 「わあ、あるんだ」 凄いじゃん、と言ったら全然と帰ってきた。訊いて欲しかったようだから悪い事したかなと思ったけどその言葉には茶目っ気が溢れていた。つくづく器が大きい。 「それで上手くいかなかったの。だから遠距離はやなのだよ」 ねえ?伊月ちゃん。何でこんな引っ越しとか転校とかと縁があるんだろう。 祖先がなんかしちゃったかな。 彼女はポテチを貪りながらそう呟き落とした。まあ美島なら有り得ない話では無いと思った。でもそんな事無いと思うし、言えなかった。目が、少しばかり寂しそうだったから。 「まあ、さ。すぐ見っかるよその位」 保証はある。 「すぐって何時?何時何分何曜日地球が何きゃい回ったとき?」 「………小学生?」 「べ、別に良いじゃーん。小は中を兼ねると言うジャマイカ!」 「生き様が器用すぎてもう才能の域だよ」 「ふっ良い事言ってくれるじゃん。流石鳳の目!ホークアイ!」 「…俺はイーグルアイです。あと態々仰々しい漢字使わないでよ秀徳の人が可哀想だから。」 「名前覚えてないんだ」 「…………えへへ」 「ふっ可愛い」 「え、あ、あれ?」 ………でも、 土台が出来上がるとは限らない。 付き合えたとして、また転校してしまったら、引っ越してしまったら、彼女の足場は崩れて潰える。 そうしたら、この子はまた傷付くんじゃないだろうか。 何しろ繊細多感な中学生だ。 「…ね、俊」 「統一しようよ統一」 「…全国を統一的なあれですか?ありったけの野望的な」 「そんなありったけに傍迷惑なのはホントに辞めた方が良いと思う」 「人は成長して……………………成長するんだよ」 「君は何処まで行きたいのかな?」 あ、 「……………何処にも、行きたくないな」 迂闊だった。 「ご、ごめん、そんなつもりじゃ…」 「…………ねえ、伊月俊ちゃん」 とうとうこうなったか。 「…………はい」 「貴女となら、繋がっていられる気がする」 「…………は、」 あなたとなら、どこへだって。 (ほんっと鈍いねえ)(え、え、?)(告白くらい男の子からしてよ)(あ、え、ご、ごめん)(可愛いからいいや) 可愛いって…………。 (や、嬉しいけど、さ) ‐‐‐‐‐‐‐‐ 伊月先輩に告白させたかったのに………… どうしてこうなったww 20100624 まえつぎ |