べたべたの恋愛は嫌い。 だから、少女漫画なんてモノはあんまり好かなかった。その内の大半、特に対象年齢の低いモノの終着点は口付け、または身体にあり、それが気に入らなかった。確かにそれはキラキラしていて、目の奪われるものだった。小綺麗に着飾ったそれに確かに魅力はあり、それを感じはした。 でも、憧れはしなかった。 文字も右に同じ。ファンタジーとか、恋愛以外にしっかり軸、中身のあるものなら全然美味しく戴くんだけど、恋愛が主軸って言うか、それしか無いようなものは駄目だった。けして魅力が無いとは言わない。 只自分にそれが合わ無かっただけ。 それに、自分には他にやる事が沢山あった。バラエティ番組を見たり、少年漫画を読み漁ったり、ぶっちゃけて言えば、女の子らしい人間じゃないんだよね。 それが今の性格に影響してる。 今の状況にもきっと影響してる。 極端すぎる自分を恨むよ、ホント。 「何たそがれてんの美島ー」 「こーら田中、人を誉めるのも程々に!美島が付け上がるからさ」 「高尾。私別にたそがれて無いけど寝惚けてもないよ、よだれも垂らしてないよ」 「何で突然一人称が私になったのか聞いて良い?」 「良いよ」 「何で突然一人称が私になったんだ?」 「私が女だからです」 「別に女に限った人称じゃ無いと思うよ」 「田中、私を信じて。私は女よ」 「田中、騙されるな。こいつは女だ」 「高尾くん。授業中に喋っちゃいけねーなあ、いけねーよ」 「ホントだよお前等。廊下に出てろ」 「先生、それはとても古典的な案ですね」 「じゃあ僕ら是非実行させていただきます」 「行くよ藤木」 「何で俺だよ」 「また田中が百点採れなかったら困るからだよ」 「意味わかんねーよ」 「アイツいつも九十九点止まりなんだよねーなんかもう煮え切らないアベックみたいな気持ちだよ」 「更にわかんねーよ」 で、廊下でざわざわしてるうちが何をそんなに困っているかと言うと、恋をしたからである。 まだ高校一年生なうちは、まだ高校一年生な彼に惚れてしまったのだ。そう、緑間真太郎に。 彼は凄く頭が良くて、次の学年首席とも噂されている。あと、バスケも凄く凄く上手くて、高尾について行くフリして何度も見に行った。凄く凄くカッコいいのだ。 ただ、どうしたら良いのかわからない。知識も経験もないから、まっさらなうちの心は脈打ちまくりである。 高尾とはふっつうに話せるのに、緑間真太郎とはふっつうに話せない。何か、頑なな人間に成ってしまう。助けて欲しい人に成ってしまう。 ううちくしょう、恋って恋って、こんなモノなのか。 本屋に飛び込みたい自分に、お金は優しくなかった。 まっさら少女 美島さんと高尾くんと藤木が出てった後の教室内の会話。 「アイツ等は静かに教室を出る事も出来ないのか」 「ツクモちゃん、でもアイツ等頭良いよ」 「美島なんて赤点採ったこと無いんだってよ」 「スゲーなそれ」 「とりあえず人の名前を片仮名で呼ぶなよな、てか俺は先生だ」 「なあな、田中が百点採れないのって担任がツクモちゃんだからじゃないの」 「ああ、漢字で書いたら九十九だもんな」 「アイツ等つくづくめんどくさいよ」 「てか天才だな」 「何で美島は気付かないんだろう」 「ホントだよ。鈍いにも程がある」 「高尾も高尾で言っちまえば良いのに」 「まあ、そう言う風に出来ないのが恋ってやつなんだろ」 ―――――――― 煮え切らないアベックのような気分だよ^^ . まえつぎ |