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王子は姫を守るもの
7

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夏休みが明けてしばらく経った頃、黒羽のクラスに転校生がやってきた。
それが蒼汰だった。

「か、河合蒼汰です。よ、よろしくおねがいします……」

板野先生がみんなの前で紹介した後、蒼汰がどもりながら挨拶をした。
ただお辞儀をしているだけなのに、あまりにおどおどとしているので、まるで謝っているようだった。
珍しい転校生に期待で胸を膨らませていた生徒たちは、明らかに落胆していた。
転校生という非日常的な言葉を聞いて、男子は可愛い女の子を、女子はかっこいい男の子を期待するのは当然のことである。
しかし、蒼汰はあまりにみんなの期待とかけ離れた存在だった。
彼が纏う圧倒的な負のオーラは、誰もが少し距離を置きたいと思うものがあった。

「みんな、仲良くしてあげてね」

生徒たちの落胆を知ってか知らずか、板野先生は念を押すように生徒たちを見渡しながら言った。
子どもたちも馬鹿ではないので「はーい」とだけ答えた。
黒羽としては、ひとりぼっちの苦しみは痛いほど分かるので、できれば声を掛けてあげたいと思った。
だが、転校生と言う良くも悪くも目立つ存在に声を掛ける勇気など黒羽には到底なく、ただ心の中で彼が平穏に学校生活を送れるよう祈ることしかできなかった。

蒼汰は、窓側の一番後ろの席、黒羽の二つ後ろの席に座った。
後ろをちらりと見遣る。
蒼汰の横は、杉浦だった。
杉浦は人好きのする笑みで蒼汰に挨拶をしていた。
しかし、その狐のように釣り上がった細目に、邪悪な光が光っていたのを黒羽は見逃さなかった。

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