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止むに止まれず、愛
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精液は床からきれいに消えたが、入れ替わりに舌が這った唾液の足跡が残ったため、結局雑巾で拭き取らなくてはならなかった。
その雑巾を取りに柴崎は自分の家に戻った。
残された俺は、宮部の横に腰を降ろした。
視線の先のテレビは止まったままだ。
時が止まった世界は無に近い静寂に満ちている。
さっきまでここに響いていた柴崎の熱を帯びた喘ぎや息遣いは、全て静寂に流された。
もうここにないそれらを、体に染み込んだ感触から懸命に掻き集める。
汗ばんだ皮膚だとか、鼓膜を湿らす喘ぎだとか、手のひらに響く脈動だとか……。

「柴崎、今日もすごかったなぁ」

膝の上に肘をついて、宮部に顔を向ける。

「アイツ、淫乱の才能あるよ」

「そりゃあ、僕が相手だからね」

綺麗な横顔がうねるような歪さで動いた。
精液だとか淫乱だとかそういったものからかけ離れた爽やかな笑みで、宮部がこちらを向いた。

「保は僕のことが大好きだから」

不遜に言い放つ宮部に、俺はため息を吐いた。

「お前って本当に性格悪いよな」

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