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存在価値≠存在理由



「…っ……」

マスター、
その名さえも呼べない私。


数ヶ月前にどこが壊れたのか急に声が出なくなった。


歌えなくなった私はただ、破棄されるのをこうして待つだけ。
なのにマスターは私をなかなか棄ててはくれない。
毎日毎日、直す方法は無いかと必死になって調べてる。
私はそれを見ているだけ。ただ、破棄されるのを願って待つだけ。


(マスター、)(もういいよ)
(おねがい、)(もうやめて)
(私を棄てて)(惨めなのよ)

声の出ない私には、歌うことのできない私には、存在価値が無いのに。
新しい誰かを買えばいいのに。
マスターは、"私"を手離そうとしてくれない。
歌えないまま動き続ける私は、気持ちを伝えられないまま、今日もマスターを見守るだけ。


(ねぇ、マスター)
(おねがいだから)
(私を棄てて下さい)


瞳から出るはずのない涙が出て、ああ、目まで壊れてしまったのかしらと思った。
























あきゅろす。
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