[携帯モード] [URL送信]
残酷な人たち



「馬鹿、」

熱い。
目を開けると燃え盛る火が瞳までも染め上げた。そんな私の視界の隅で震える貴方が見える。

ああ、火計は、成功したのですね。焦って爆風に吹き飛ばされてしまいましたが。
でも、これで形勢は逆転したでしょう。貴方を勝利に導ける。なんて幸せなことでしょう。

「馬鹿野郎っ」

けれど貴方は、笑ってくれない。
震えながら、涙をぼろぼろと流しながら、それでも貴方は私を抱きしめる。
強く、強く。

かっこ悪い、でもそんなところも好きだ、なんて、ぼんやりと頭の奥で考えた。

「か、んねっぇ…ど、の」
「…っ陸遜…」

やっと出た声は小さく掠れてしまった。でも甘寧殿には届いたようで安心した。

笑うと額がひんやりとした。打ちつけた箇所から先程から止まることを知らない血が、流れ出ては空気に触れ、黒く固まっていく。

「馬鹿野郎がっ…!俺は、おれ、は!」

わかっています。
貴方は私が貴方の為に傷つくことを好まない。

私が、貴方の為に死のうとしている今でさえ、こんなにも悲しんでいる。


「嫌だ!陸遜!」


残酷なくらい純粋な方だ、貴方は。
そして優しい。



「お前は、残酷なやつだよ。陸遜。」



貴方の涙が、私の頬に落ちて、
貴方の顔が、悲しいままぼやけてく。



この涙が乾く前には、
きっと"私"は、ここにいないのでしょうね。








あきゅろす。
無料HPエムペ!