残酷な人たち
「馬鹿、」
熱い。
目を開けると燃え盛る火が瞳までも染め上げた。そんな私の視界の隅で震える貴方が見える。
ああ、火計は、成功したのですね。焦って爆風に吹き飛ばされてしまいましたが。
でも、これで形勢は逆転したでしょう。貴方を勝利に導ける。なんて幸せなことでしょう。
「馬鹿野郎っ」
けれど貴方は、笑ってくれない。
震えながら、涙をぼろぼろと流しながら、それでも貴方は私を抱きしめる。
強く、強く。
かっこ悪い、でもそんなところも好きだ、なんて、ぼんやりと頭の奥で考えた。
「か、んねっぇ…ど、の」
「…っ陸遜…」
やっと出た声は小さく掠れてしまった。でも甘寧殿には届いたようで安心した。
笑うと額がひんやりとした。打ちつけた箇所から先程から止まることを知らない血が、流れ出ては空気に触れ、黒く固まっていく。
「馬鹿野郎がっ…!俺は、おれ、は!」
わかっています。
貴方は私が貴方の為に傷つくことを好まない。
私が、貴方の為に死のうとしている今でさえ、こんなにも悲しんでいる。
「嫌だ!陸遜!」
残酷なくらい純粋な方だ、貴方は。
そして優しい。
「お前は、残酷なやつだよ。陸遜。」
貴方の涙が、私の頬に落ちて、
貴方の顔が、悲しいままぼやけてく。
この涙が乾く前には、
きっと"私"は、ここにいないのでしょうね。
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