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―はずれかけた枷―
―はずれかけた枷―


その出来事は絵画のようで、俺は額縁の外からその絵画を見つめている気分だった。それほど現実味がなくて悪夢だと思って、でもそれはリアル
「今でも、まだ整理が付かない。でも、殺意の向く先だけは決まっているからマシだよな」
「そうですね」
昔話に花を咲かせる、だがその昔話は暖かな世界じゃなく凍てつく地獄の話だ
俺は背を付けていた柱から離れヴァンを正面から見つめる
「何時になったら殺させてくれる?」
「・・・」
あっさりと口から出た物騒な言葉に口許を緩めて笑う
「別に俺は刺し違えても構わないんだ。アイツさえ討てればこんな命くれてやる」
「ガイラルディア様」
「だから早いところ計画をっ」
ヴァンが俺を強く抱き締める
まるで俺の言葉を遮ろうとするように
時々お前はこうやって俺の言葉を遮るよな
まぁ、お前の腕の中は心地良いから別にいいが
「必ず時期が来ます。どうか、その時までは堪えて下さい」
「お前がそう言うなら」
「貴公と共に、私は何処までも行きますガイラルディア様」
「あぁ」
俺はヴァンの背に手を回してその服を掴む、そして顔を上げて唇を重ねて顔を離すと俺は笑った





「あぁ〜明日ヴァン師匠帰っちゃうのか」
「仕方ないだろ」
「う〜、ガイだけだと暇なんだよ」
ベッドでゴロゴロ転がりながらルークが言うと笑ってしまう
作り笑いだけど笑みを見せるとルークは顔を反らしてよく頬を染めた
少なからず俺に好意を持つ、このレプリカ
吐き気がした、昔は
ファブレ公爵の面影があるこのレプリカは俺を掻き乱す
好きになれない、だから吐き気がする
そう思っていた筈だった
その感情は何時しか凍てついていた俺を溶かしていき、今ではこの場所が居心地がいいとすら感じてしまう


まぁ、ルークいやルークレプリカは悪くない。実際殺すとすればオリジナルルークだし、根元の殺意はファブレ公爵だ
だから別にここに浸っていてもいいだろう
これは何も関係ないレプリカなのだから
利用されるだけの哀れな道具
「ガイ、どうしたんだよ」
「いや、何でもない」
そうだ、コイツは哀れなんだ。俺なんかよりもずっと

そう思うと不思議と楽な気持ちになった

最低の、考えだ・・・








夜の帳に支配された世界で俺と彼は知られざる密会を果たす
「レプリカは随分と貴公になついていますな」
「それはお前にだろ」
「私など只の遊び相手ですよ」
「そっくりそのまま返してやる」
ヴァンとこうして会うのは何回目、いや何十回目だろう
あの日から・・・



『哀れな』
『っ・・・』
『これ程の容姿、泥水を啜らせるのは惜しい・・・この者を引き取ろう。私の息子に与える。美しいものとは愛でるものだからな』


屈辱だった
ペールは人知れず悔し涙を流し、俺は憎しみの憎悪を広げ唇を噛み締める
そして、ファブレ公爵は俺とペールを屋敷に引き取り、ペールには庭を与え、俺にはルークと言う名の鎖を付けた
ペールは何時も二人になると俺に頭を下げる
それが苦しかった
無力な自分が許せない
復讐を遂げるのに俺はあまりにも小さ過ぎた・・・


「何時か必ず殺してやる」
「・・・」
「必ず、地獄に落として業火で焼いてやる。ハッハハッ。一度殺しただけじゃ気が済まない。原型を留めぬ程切り刻んでやるさ」
「ガイラルディア様」
ヴァンの腕が俺を抱く
「どうした。抱くか?」
「いえ、貴方様は私にとっては穢れなき存在。浅ましい欲で汚すなどあってはならない」
「ふっ、別に俺はいいんだけどな。お前に抱かれて汚れるなら本望さ」
言葉通り、ヴァンを誘うのは初めてじゃない
何度か誘ったがヴァンが俺の気持ちを受け取る事は無かった
拒絶と言う程じゃないが断ってくるし、触れ合いはキスと抱き締めるまでしかしない
十代半ばの恋愛だ。いやそれより幼いかもしれない
でも俺は
「なら、キスしようぜ」
「はい」
唇を重ねて伝わる愛情で満足だった
「ンッ」
ヴァンを近くに感じるのが嬉しい
唇が離れても俺はヴァンを抱く手に力を入れた
「愛しております。貴方様に永遠の忠誠を」
「お前の忠誠、受け取ろうヴァンデスデルカ」

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