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小話
襲い受 後編
暗闇が支配する部屋に沈黙が落ちる。
「え、ルーク、お前、ふと」
は、と我に返ったガイの言葉を、ルークが早口でまくし立てて遮る。
「だってよ、仕方ねえんだよ!お前ら技の熟練度磨くとかなんとか言って、ここんとこずーっと俺とナタリア二軍だろ。
おまけにジェイド。あのおっさんが、料理を極めるとか何とか言い出したのはいいけどよ、なんであいつフルーツミックスレシピなのに勝手にクリームパフェとか作るわけ?
余計なマネすんなってーの。いいよ、ジェイドは、そしてガイは。食えばまた魔物相手に身体動かせんだから。でも俺とナタリアは荷物もってぼーっと突っ立てて。
なのに毎回カロリーたっぷりのデザートだの、食事を食わなきゃいけなくてさ。俺ら二人の気持ちわかるか?絶望で目の前真っ暗なんだぜ!!」
捲くし立てるルークに言葉を挟むことが出来ずに呆然としながら、ルークがこの頃ベルセルク衣装なのは、そしてナタリアあんなに気に入っていたマルクトの星の衣装を着ないのは、そういう事だったのかと合点がいった。
そして二人が暇さえあれば顔を付き合わせてひそひそ話をしたり、ともに視線を落として物憂げな表情をうかべて吐息していた事も。
「だから、太ったのは、俺だけのせいじゃねえ!こっちだって必死に、見えない所で腹筋鍛えた……うひゃ!」
情けない声があがったのは、ガイが寝間着の裾から手を突っ込んでルークの腹を一撫でしたからだ。
「ば、ばか、さ、さわんなっ!!」
「……太ったってどこが?」
暗闇の中、ルークの腹部に触れるが、割れた腹筋以外余分な贅肉などついてはいない。
「いや、ほら、もっと上。そ、そこらへん。なんか筋肉がゆるくない?柔らかくなってないか?」
何度も触れても見るが、一週間前に触れた時となんら変わりはない。
「いや、別に」
「だってよ、ナタリアが『このままでは絶対太ってしまいますわ』って言い出すんだぜ」
どうやらナタリアの嘆きを聞いているうちに、ルークも己の体型が気になり始めたらしい。
トコトンまで突き進むナタリアと、ネガティブ思考に一度陥るとどん底まで嵌り込むルークの組み合わせは、負の連鎖を起こしたようだ。
「あのなあ、ナタリアと俺。どっちがお前の裸見慣れてると思うんだ」
「……でもガイは俺に気遣って本心言わねーかもしんないだろ」
参ったな、とガイは額に手を当ててため息をつく。
これじゃどう言っても、ルークは自分の思い込みを覆さないだろう。
「で、お前の体型変化で何故俺が避けられるんだ」
「……だって、その。……太った身体、ガイにみせたくねーじゃん……」
その言葉はまさに不意打ちであった。瞠目し、暗闇の中、ルークの顔を凝視する。
闇の中でもルークが恥ずかしそうに顔を伏せる姿がすんなりと目に浮かぶ。
それほどに、ガイはルークを「知っている」
14歳の頃から、10歳の身体で中身は0歳児だったルークの面倒をみてきたガイだ。
ルークの裸に対しての恥らう気持ちは鈍く、それよりも「立派に育って」と親のような感慨を覚える方が優っていた。それは恋人同士となり、肉体関係を結んでも変わることはなかった。
だからこそ、ルークが今告げた告白は、ガイの心をついた。
胸が締め付けられる。
愛おしいという想いが溢れ出す。
溢れ出した想いに突き動かされるように、ぎゅっと再びルークの身体を抱きしめる。
腕の中でルークが強張らせた事がわかっていながらも、とにかく抱き締めたかった。
ルークの体温を、匂いを、鼓膜を震わせる吐息を間近で感じる事で、ようやく気持ちが落ち着き始める。
「ルーク、ごめんな」
「は?なんでガイがあやまんだよ。ジェイドがパフェばっか作るからだろ」
「いや、そうじゃないんだ。俺は肝心な所で、無頓着だな……」
ガイがルークに向ける愛情は確かなものではあるが、時々、違う情が入り込む。
そのたびにルークが察してむくれれば、口では謝りながらも、これはもう習性のようなもので意識変化は出来ないだろうと思っていた。
だけども今。
あまりに真っ直ぐに澱むことなく向けられた感情は、あまりにも眩しくて。そしてあまりにも嬉しくて。
「今、お前の望む事は、なんでもしてやりたい気分だ」
その言葉に腕の中のルークがピクリと反応する。
じゃ離してくれよ、と言われるだろうか。そうガイは推量する。それは悲しいな、と思うガイの鼓膜をルークの声で震わせる。
ルークの願いは、その予想に反したものであった。


ベッドサイトの仄かな明かりはその周囲を申し訳程度に照らす程度だ。
少し開いた脚の間で、蠢く金糸の下は影になってその表情を窺い知ることは出来ない。だが。
鈴口から溢れる先走りと、余すところなくガイの舌で舐められたルークの性器は濡れそぼっている。
そそり立つ下の柔らかな双珠も含んで、舌で愛撫しながら口内で転がすようにすれば、「んっあッ」と声が漏れ、腰を跳ねさせる。
再び裏筋を刺激するように舐め、括れたところを一周するように舌を蠢かせば、また透明な雫がこぼれだす。
「ガ…、イ…、も、もう、やっぱ…いい」
内腿をびくびくと痙攣させ、このうえない刺激に沸き立ちながらも、欲望に率直になる事に怖気づく。
自らがガイにねだったことだ。
『……やだったら。ダメでいいんだけど、さ。その、えー…と。………………くちでして』
後半は早口で小声で捲し立てた。その言葉を受けてガイは、暗闇の中、ふっと笑って「いいよ」と言って優しく口づけてきた。
掌や、ガイの内部とも違う刺激に、このままだと、そう遠くない絶頂に怯えている。
ルークの制止を聞こえぬ振りをして、ガイは奉仕を続ける。
先端の割れ目にそって舌を尖らせ、先走りを掬うように舐める。
「ひゃ…、ガイ、ガぃ…」
優しく先端を咥えこむと、そのまま唇をすぼませて根元まで深く飲み込んだ。
「だ、ヤバッ、ダメ、…ガっ」
一気に背を快楽の電流が駆け抜ける。ルークはガイの肩を掴み、己の腰を引く。
ガイの唇からずるりと抜けた瞬間。
爆ぜた。
びゅくびゅくと射精の勢いは止まらず、ガイの唇だけでなく、髪や顔を白く穢す。
射精の快楽に、はあ、と満足気な息を吐いた後、は、と我に返ったルークは顔をこわばらせる。
「わ、わりい。汚れちまった」
あたふたと寝台から下りて、タオルをとりに行こうとするルークの手をガイがつかむ。
「まだ、…終わってないだろ?」
ガイの声に怒りが滲んでない事に安堵して、ルークはゆっくり振り返る。
そこには。
どろりと流れる精液を親指で拭いながら、唇にかかった液を赤い舌で舐めとるガイの姿があった。
その光景を脳が理解した時、ルークの一つの箍が外れた。
掴まれた手を逆に掴むと、そのまま寝台に押し倒す。
ガイに深く口付けると、己の出したものの苦さと青臭さに眉をしかめそうになるが、その勢いが止まらない。
思う様口内を嘗め尽くし、舌を絡めて唾液を啜り合う。
ようやく落ち着き口を離すと、ルークはガイに問いかける。
「な、なあ。俺が太っても、俺のこと嫌いになんない?」
「なるもんか。お前だって、俺がおっさんになったら嫌いになるか?」
「なんねーよ。ぜーったい嫌いになんかならない」
「だろ?それにお前太ってな」
ガイの言葉は再び重ねられた口づけによって遮断される。


「ル…う、」
シーツをきつく握り締めながら、息を甘く乱しながらゆるりと頭を振るう。
「キツ…い?」
あんなにえろく誘うガイを目の当たりにして、理性が吹き飛んだ。
というルークはその言葉通りに、性急に解した箇所に欲望を突き入れた。
痛みと圧迫感に打ち震えながらもガイは、微笑んでみせる。
「なじむまで、このま、ま。うん、そうやって抱きしめ、て」
繋がったままぎゅっと肌を密着させると、汗でぴたりと身体がはりつく。
肩にあたるガイの息は、ふ、ふ、と小さく刻んでいる。
金の髪を撫でながら、耳たぶに唇を寄せて愛撫する。
「くす、ぐったいな」
「気持ちいい、って言えよ」
「じゃ、気持ちいい」
くすくす笑うガイに、ルークも嬉しくなってくる。
俺がすごいデブになっても、ガイはかわらずにこうして笑ってくれるんだろう。
こうして身体をつなげれば、さっきまであんなに大きく自分の中をしめていた不安や悩みが消し飛んでいく。
「やっぱり俺、ガイがいないとダメだなあ」
しみじみそうつぶやくと、ガイも
「俺もだよ」
そう言うと、顔をずらし、ルークの頬にくちづける。
そこでまた、ルークの理性の箍が外れた。






**********


抜けるような青空。そして小鳥の囀りが遠くから聞こえてくる。
ガイは空を見上げて、ふうっと溜め息をつく。隣でティアも、顔を伏せて重苦しい息を吐き出しそうである。
ケテルブルクに宿泊してから体調不良のため二軍になったガイと、技を一通り極めたティアは今日も仲良く荷物持ちである。
ルークの勝利の掛け声が前方からあがり、ジェイドがいそいそと料理を作り始める。
「大佐はまた、クリームパフェなのかしら」
ティアの声は咎める響きを含んでいる。
「…だろうな。あれを極めれば全料理マスターになるそうだから」
「でも、レシピはフルーツミックスよね。何故勝手にパフェなんて作るのかしら」
その表情がどんどん険しくなっていくのをガイは感じながら、己の腹部にそっと手を置く。
最近筋肉が緩くなっている気がする。このままじゃ、ルークから……。
二人の物憂げな表情など露知らず、ジェイドが愉しげに「さあ、みなさん、食べてください」とパフェを振る舞い始めた。



キリリクでいただいた誘い受けを書いている時のプロトタイプでした(だから一部設定が被っています)
途中頓挫したのですが、タカトリナナさんの暖かい言葉で完成させることができた感慨深い話です。
本当に有難うございます。
去年末にタカトリナナさんのお宅に飾らせていただきました

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あきゅろす。
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