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小話
魔物×魔物ハンター エピローグ

ティアは4年ほど前からこの村に身を寄せている。
市場で買い物をしているところ、ある村の男たちから攫われイケニエとされた。
魔物が住むという屋敷の玄関口に、荷物のように放り出された。
そこにいたのは赤い髪の少年と、小さく愛くるしい聖獣が一匹。
少年はティアに興味も持たずに、この村に続く道を教え逃してくれた。
その際は食料に、路銀まで用意をしてくれた。
この小さな村にたどり着いた時、ティアを攫った村の悪評を何度も耳にした。
だが、あの村はどんな悪天候にみまわれても、毎年豊穣を約束された豊かな村であった。
豊かな村は、ならず者や傭兵を雇う潤沢な資金に恵まれる。三年に一度、近隣の村から娘を攫うのはあの村ぐるみの犯行だとわかっていても、表立っての抗議など出来ずじまいであった。
だが、一年前。巨大な光の柱が天まで突き抜けたあの日。
あれから、あの村は厄災続きであった。
井戸は干上がり、湖は汚染され、作物は全く育たず、何よりも今までなかった魔物や魔獣から度々襲われるようになった。
見る見る間に村は凋落していく事となる。
その時彼らは漸く気づいたのだ。
あの屋敷の魔物こそが、あの村に豊穣と平和をもたらした存在ではなかったのか、と。
平和ゆえに驕り高ぶった村人は、金の卵を生むガチョウを屠ってしまった。
もう豊かさは戻らない。平和も戻らない。
村は荒れ果て、村人達は次々に逃げ出し、今となっては廃村寸前である。


ティアは顔なじみのおかみさんから「チーグルの子はまた港にいったよ」と教えられる。
仕方ないわね、と微笑みながら、礼を述べてから港へ歩きだす。
一年前、ミュウは泣きながらこの村へとたどり着いた。それを保護したのはティアである。
その日からティアはミュウの仮の飼い主となっている。
週に一度やってくる定期便をミュウは港で佇んで待っている。
その船に、彼のご主人様とガイさんが乗っていると信じて。
「ミュウ、潮風に飛ばされないようにね」
小さな村の波止場は、頑丈とは言いがたい。実際三度程ミュウ潮風に煽られて海に落ちたことがある。
「はいですの」
ちょこんと座って、近づいてくる船をじっと見つめている。
「今日こそご主人様に『おかえりなさい』を言うですの」
「ええ、そうね」
幾度と無く繰り返された会話。
その時かもめ数匹がミュウの周りを鳴きながら旋回する。
ミュウが食べられるのでは、とティアが小刀を構え殺気を漲らせたのとは裏腹に、ミュウはキラキラと目を輝かせる。


********


「まだこんなに離れてんのに、でっけー声で叫んでるぜ」
はあ、と手すりに顔を押し当てて、盛大な息を吐き出す。顔をあげないまま、ぼそっと呟く。
「やっぱブタザルなんで無視してよかったんじゃねえの」
「素直じゃないねえ。ほら、顔あげて手を振ってやれよ。嬉しくて顔真っ赤になっている事は、俺にはお見通しだから」
「ちげーよ!」
そう言いつつ顔をあげようとはしない。短くなってしまった髪は、真っ赤に熱をもった耳をガイに晒している。
「ほら、顔をあげてくれよ。俺一人で手を振り続けるの、結構間抜けで恥ずかしいんだぜ」
「…ったく、仕方ねえな」
まだ頬に赤みが残った顔をあげると、甲高い声で「ごしゅじんさまー、ガイさーん、おかえりなさいですのー」と必死で叫んでいるミュウに手を振ってやる。
「ブタザル迎えに行ったら、それから西の地方を目指すんだよな」
「まあな」
「しかし、あいついたらエッチやりにくくなるよな」
ルークの言葉に、今度はガイが顔を真っ赤に染めて、何か言いたげに口をパクパクさせている。
「あ、でもあいつ寝るの早いから大丈夫か。それにスリルもあっていいかもな。声を殺すガイもいろっぽいだろうし」
「ルーク、あのなあ」
「いーだろ。だってさ」
ぎゅっと上げていない方の手を掴む。仰ぎ見るその先にある金色は陽光を受けて煌めいて、呆れよりも照れをおおく差した蒼い瞳は空だけではなく海の色でもあると、あそこを出て初めて知った。
幸せはここにあるのだ、確かに。
「お前に触れて幸せだしさ」
「俺も幸せだよ」
さらりと交わすことなく、ガイにしては珍しく素直に言葉を返す。ルークは僅かに目を見開いて、それから嬉しそうに目を細める。
二人は顔を見合わせ、嬉しそうに、どこかくすぐったそうにして、笑いあう。



※タカトリナナさんのつぶやきに勝手に滾って書いたもの。かなり残念クオリティ
ナナさんのつぶやきはめっさ萌えたのに……
そして自分が長文書きに向いてないのを改めて自覚しました

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あきゅろす。
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